世界のステンドグラス用ガラスメーカー

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ステンドグラスにとって最も重要な素材である、ガラス。世の中にはどんなガラスがあって、それはどこの会社がどんな風に作っているのか。


と言う訳で、ステンドグラス用ガラスメーカーをまとめてみた。


因みに、日本ではステンド用のガラスは、ほぼ作られておらず、99%外国製である。ちょっと残念。



メーカーとガラスの特徴

◆スペクトラム / Spectrum / アメリカImage

http://www.spectrumglass.com

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ステンドグラス用ガラスメーカーとしては世界最大規模。主に機械で作られているため品質が安定しており、また、厚さがほぼ一定のためカットしやすい。ガラスの種類、表面のテクスチャ、色が豊富。大量生産のため価格も手ごろなのもGood。人工的な感じのガラスが多いが、しかし決して安っぽいわけではなく、味わい深いガラスも存在する。クリア系のガラスの種類が豊富なのも大きな特徴。

注釈

2016年に一旦廃業。理由は財政難と環境問題絡みと言われている。2018年現在、アメリカのOceanside Glasstile(オーシャンサイド・グラスタイル)社が経営を引き継ぎ、メキシコの工場にて、以前通りではないにせよ、製造を行っている。スペクトラム社は消滅したが、ブランド名として名前は残っている。

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このガラスは、spiritシリーズ。普通のガラスだけではなく、このようなアンティーク調のガラスもある。




◆ココモ / KOKOMO / アメリカImage

http://www.kog.com

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1888年創業で、アメリカでは最古のメーカー。色数、テクスチャ共に非常に豊富で、味わい深い落ち着いたガラスが多い。 大正時代、日本に最初に紹介されたメーカーでもあり、日本の古いステンドグラスには多く使われている。


マシンメイドだが、職人が作ったような暖かさも併せ持つその魅力に引かれるファンも多い。 価格と品質(色味や味わい深さ)のバランスが非常に良く、個人的に好きなメーカー。

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◆ブルズアイ / BULLSEYE / アメリカImage

http://www.bullseyeglass.com

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「ブルザイ」の名で親しまれている、ステンドグラスのランプ制作などでお馴染みのメーカー。ビビッドかつ特徴的で個性のあるガラスが多く、これぞという一枚にめぐり会うことも多い。特にCUR(キュアリアス)と呼ばれる定番の変形モノの中には、安価ながら絶品が見つかることがある。因みに、BULLSEYEは雄牛の目という意味。


一般的には、マシンメイドではなくハンドメイドのガラスに位置づけられる。

※ハンドメイドと言っても全ての工程を手で行う訳ではないため、実はマシンメイド(マシンロール)とハンドメイド(ハンドロール)の明確な境界線は存在しない。

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◆ウロボロス / UROBOROS / アメリカImage

http://www.uroboros.com

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自分の尻尾を噛んでいるいる竜のマークでお馴染み、ランク制作に欠かせない有名メーカー。 モトル(まだら)模様が有名。発色はブルズアイと同様ビビッドなものが多い。また、アンカット(UNCAT)と呼ばれる、定番外の一点ものガラスが多く流通している。なお、アンカットは、定番ガラス制作時の失敗ガラスが主で、中には実験的に作られたものも存在すると思われる(勝手な想像)。

注釈

政府から環境問題の指摘を受けたことをきっかけに、2016年に一旦廃業。2018年現在、アメリカのOceanside Glasstile(オーシャンサイド・グラスタイル)社が経営を引き継ぎ、以前通りではないにせよ、製造を行っている。ウロボロスという名は、今もブランド名として残っている。

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◆ヤカゲニー / YOUGHIOGHENY / アメリカImage

http://www.youghioghenyglass.com

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アメリカインディアンであるヤカゲニー族の名を冠したガラスメーカーで、マークもインディアンの横顔になっている。 リングモトル(リング型のモトル)のガラスや、スティップルと呼ばれる和紙のようなシャーベットのような質感のガラスが有名。


また、かのティファニーが使っていたガラスの再現にも力を入れている。

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◆オセアナ / OCEANA / アメリカImage

http://www.youghioghenyglass.com

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アートガラスの最高峰との呼び声も高いオセアナだが、燃料費の高騰により元々の工場を閉鎖し、現在はヤカゲニー社内に生産場所を移してガラス作りが行われている。


個人的には、良い意味で濃くて重い印象が強いガラス。また、ガラスに「Oceana」の刻印があるのも特徴的。

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◆ランバーツ / Lamberts / ドイツImage

http://www.lamberts.de

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アンティークガラスでは世界随一の品質と生産量を誇るメーカー。(板ガラスの世界では、昔ながらの手吹きで作られたガラスがアンティークガラスと呼ばれている。古いガラスという意味ではない。)その品質の良さから、ステンドグラスのみならず建築業界からも高い信頼を得ている。これは、同社HPのトップ画面の画像を見れば容易に想像がつく。

ガラスの落ち着いた色合い、やわらかいテクスチャ、伝わってくるガラス職人の想いは、世界中の人々を日々魅了し続けている。

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このガラスはスペシャルバージョンのフラッシュ(被せ)ガラス。裏表で表情が違う。写真で伝わるかどうかわからないが、身震いする美しさ。このガラスで、小売価格は5万円~10万の間くらいだと思われる。(買えんw)

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裏側。うっすらと白い幕が。

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表は鮮やか。



◆サンゴバン(型板) / SAINT-GOBAIN / フランスImage

http://www.saint-gobain.com

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サンゴバン社は世界でもトップクラスのコングロマリットで、フランスで随一の総合ガラスメーカー。その製品群の一角としてサンゴバンベグラ(Vegla)社で型板ガラスを生産している。


型板ガラスはその名の通り機械的に型にガラス流して作られているため、大きなサイズを低コストで生産できる。そのため、ステンドグラス用というより単体で板ガラスとして建築関係で多く使われている模様。


通常のステンドグラス用ガラスは厚さ3mmが多いが、サンゴバンの型板は4mmである。そのためケイムで組みにくかったり、カッパーを巻く際に不都合があったりもする。だが、使用するとすっきり涼やかながらも格調高い作品が出来上がる。

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各ガラスにそれぞれ個別の名称が付けられているのも大きな特徴。上の写真では、下から「アブストラクト」「モール」「エストラド」「モニュメント」「サハラ」が使用されている。



◆サンゴバン(アンティーク) / SAINT-GOBAIN / フランスImage

http://www.saint-just.com

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サンゴバングループの一企業であるサン・ジェスト社が製造している、手吹きのフルアンティークガラス。 ルイ14世の頃のベルサイズ宮殿の窓ガラスを造る工場を源流し、350年以上の歴史と伝統を持つ。


その、吸い込まれそうになるほどの気品ある美しさは、切らずにガラス単体でずっと側に持って置きたいと思わせるほどの魅力がある。


ただ、流通量がランバーツと比べて少なく、場合によってはランバーツ社の工場で作られたものも存在する。

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◆デザーグ(ショット) / desag(schott) / ドイツImage

http://www.schott.com

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ニューアンティークと呼ばれる、人工的にアンティークガラスの風合いを模したシリーズで知られている。正式名称はARTISTA。やや薄手で厚さが均一のため切り易く、アンティークよりは大幅に安価なのが魅力。表面に独特の引っかき模様がある。

なお、デザーグ社は旧名で、現在はドイツの産業用ガラスメーカーとして有名なショット社で作られている。

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◆フリモント / Fremont / アメリカImage

最高級のアンティークガラスを作るメーカーとして知られており、現在はオーナーのジム・フラナガン氏が一日20枚ほどを一人で吹いている。

手吹きによるユニークで高い品質、色の流れには特徴があり、ファイヤーポリッシュ(再度窯で焼き表面を溶かす技法)仕上げによって表面には大変つやがある。


日本でも一部で神格化されるほどの人気があり、特に女性には絶大な人気を誇っている。個人的にも、一番綺麗だと思うガラスはこのフリーモント。微妙な色の変化や艶などは、ランバーツよりもこちらの方が、僅差だが上だ。

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◆ウィズマーク / THE PAUL WISSMACH GLASS CO. / アメリカImage

http://www.wissmachglass.com

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ココモに次いで古い歴史のあるメーカー。

古い時代に使われていたウィンドウパネルのガラスの雰囲気と色を再現したイングリッシュマッフルシリーズが有名。

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◆ダンカン / DUNCAN GLASS / アメリカImage

http://www.jduncanglass.com

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サンドブラストしたガラスの表面に膠(にかわ)を塗り乾かし、それが硬化・収縮する事によりガラスの表面が剥ぎ取られ、独特の模様が出現ことでテクスチャをつくる製法であるグルーチップ専門の会社。 グルーチップは昔の日本家屋に良く見られた模様だが、最近はあまり使われない。



◆オプティマム / Optimum Art Glass / アメリカImage

http://circlepad.com/optimumartglass/Homepage

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他にはない独特の質感のある透明ガラスを作っている。日本では流通量が少ない。



◆シカゴアート / CHICAGO ART GLASS / アメリカImage

http://www.chicagoartglass.com

かつては、ティファニーランプのレプリカ用など様々なガラスを制作していたメーカー。現在ガラスを製造しているかどうかは不明。HPも存在するが使われていない様。



◆アームストロング / Armstrong Glass Company / アメリカImage

http://www.armstrongglass.com

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普通のガラスより若干薄い。現在はほとんど日本に入ってきていない。



◆ブレンコ / BLENKO / アメリカImage

http://www.blenko.com/

以前は手吹きの板ガラスもつくっていた様だが、現在は不明。



◆Jスティップル / J Stipple / / 中国Image

ヤカゲニーのスティップルを模して作っている。安価だが、硬くて切り辛いのが難。

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◆モレッティ / Moretti(Effetre) / イタリアImage

ヴェネチアンガラスと言えばモレッティ。ステンドグラスで使えるガラスも多少作っているが、メインではない模様。



◆クロスノ / KROSNO / ポーランドImage

世界中にガラス製品を輸出しているクロスノ社は1923年に設立されポーランドで最大の老舗ガラス製品メーカーとしてよく知られている。



◆ミカ / MIKA / アメリカImage

http://www.mikaintl.com

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ベベルトグラス専門の会社。ベベルト(beveled)は、ガラスの角を面取りしたガラス。ステンドグラスに使用すると、とても煌びやかなパネルになる。既存のガラスを面取りすることも可能だが、それをするには大掛かりな機械と、それなりの腕を持った職人が必要。



◆ロペックス / Ropex / 日本Image

http://www.ropex.com

http://shop.ropex.com/shopbrand/039/X/

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ロペックスという会社にて、ロペフューズと言うブランド名で作られているよう。自分の探した限りでは、唯一の国産メーカー。ステンドグラスでも使えるが、基本的にはフェージング用ガラスのようである。




廃業・ビンテージ

◆フィッシャー / FISCHER / ドイツImage

ランバーツで復刻版が作られている。ビンテージ。


◆リンズ / Lins / アメリカImage

ティファニーのレプリカランプ用に有効なガラス。重厚で深みのある色合いが特徴。ビンテージ。


◆シュリッツ / Schlitz / アメリカImage

◆ワッサー / Wasser / アメリカImage

◆ハートレイウッド / Hartley Wood / イギリスImage

◆ピルキントン / Pilkington / イギリスImage

◆Tatra

◆casimir

◆gecko




製造方法

製造方法別の分類と、その方法で製造しているガラスメーカー。価格感も。

製造方法詳細主なメーカー
マシンメイド
(マシンロール、ダブルロール)
溶けたガラスを上下のローラで板状にする。アンティークと比べると非常に安価。ガラスの耳(端の部分)が切られた状態で売られている。 スペクトラム、ココモ、サンゴバン(型板)、デザーグ
ハンドメイド
(ハンドロール、シングルロール)
溶けたガラスをローラで板状にするのはマシンメイドと同じだが、より職人の手が加わる工程が長く、凝ったガラスが多い。そのために高価。ガラスの耳(端の部分)が付いたままで売られている。 ブルズアイ、ウロボロス、ヤカゲニー、オセアナ、
アンティーク
(ハンドブロー)
職人が手吹きで作る最高級ガラス。一旦口で拭いて円筒形にし、それを開いて板ガラスを作る。非常に高価。 ランバーツ、サンゴバン(アンティーク)、フリモント

YouTubeに上がっている各社の動画。


スペクトラム



ココモ



ブルズアイ



ウロボロス



ヤカゲニー



ランバーツ



サンゴバン



フリモント



ウィズマーク





リンク

基本的には、ガラスは日本に幾つかあるガラス問屋さん(名古屋の十條、大阪の田中アートグラス、東京のがらすらんど、興和商事)で実物を見て購入するのがベスト。


ただ、一般の方には敷居がやや高いので、通販で購入可能な場所をご紹介する。


ステンドグラスサプライ

歴史があり、品揃えが豊富。掲示板がとても参考になる。


スタジオヤマノ

ガラスの豊富さもさることながら、珍しいガラスが数多く売られている。


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まとめなど

アメリカとドイツ、フランスで、99%のガラスが作られている。ランプで使われるような濃いガラスは、ほぼアメリカ製。ドイツ・フランスは、アンティークも含め、ステンドグラスパネル・建材用のクリア系ガラスが多い。ステンドグラス用のガラス作りは、全体的に斜陽産業!?であり、有名なブランド・会社でもいきなり倒産したりする、予断を許さない業界でもある。


知れば知るほど、高価なガラスほど美しい気がしてくるが、必ずしもそうではない。美しさと値段は比例しない。ただ、アンティークガラスの深い色合いと透明感は、やっぱり美しい。アンティーク至上主義の工房が少なくないのも頷ける。


ガラスの神々しい輝きは、光ありきのもの。高級なガラスも、光の具合によっては逆に安っぽく見えることもある。その辺りも踏まえ、純粋にそのガラスの美しさ・価値を見極めて作品作りが出来たら良いのだろう。そういった意味では、ガラスの事を知り尽くした玄人ではなく、素人の目を持つことも大事だと言える。


あとは、見る距離というのも大きな要素。大きなパネルであれば、基本的には離れて見られことが多いので、細かいテクスチャにこだわっても無駄だったり、表面の艶など関係なかったりもする。


要は、様々なケースやデザインに合わせての、適切なガラス選びが重要なのだ。当たり前なことだが、切にそう思う。


本記事が、ステンドグラス作りの一助になれば、幸いだ。



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