ステンドグラスパネル作成手順【後編】

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【前編】の続き、 ステンドグラスパネルの作成手順の【後編】です。


ガラスと鉛線と組み合わせて形にしていきます。



組み - Leading up

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ケイムとガラスでパネルを組み上げていきます。

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今回は四角形のため、先ずは外側のケイムをを縦横一つずつしっかり固定します。

そして固定した箇所の角から、ケイムにガラスを差し込んで組み上げていきます。


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ケイムは、ケイム用のニッパーで切ります。ケイムはジャストのサイズより両端で0.25mmずつの計0.5mm程度短くするのが理想です。



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ケイムの種類はさまざまですが、今回は、外枠はFH-12、中はFH-6、Z-6.4というケイムを使用しています。(左からFH-12、FH-6、Z-6.4)

他には表面が蒲鉾型のRH-xxという種類のケイムもあります。(今回は未使用)


Zのケイムは亜鉛で出来た特殊なケイムで、強度が出る代わりに曲げる加工ができません。FHは普通の鉛製のケイムです。


組み進めていくと、大きくて組めないガラスが出てきます。それはディスクグラインダーで削ります。ステンドグラス用のルーターで削ることも、もちろん可能ですが、ガラスピースが大きいと時間が掛かるためグラインダーを使用します。


ガラスが正確に切れていても、ガラスによっては切った断面が綺麗になっていないため、それもグラインダーで削ります。


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今回は、強度があるジンク(亜鉛)ケイムを横に2本、端から端まで通しています。それ以外は通常のケイムです。ケイムは、縦横どちらを優先するかや先端の形、組む順番を計画的に考えて進めて行きます。行き当たりばったりは良くありません。


組み上がったら、半田をする前にきちんと組めているかチェックします。チェック項目は、以下です。

  • 全体のサイズが合っているか。
  • ラインがそろっているか
  • 垂直・水平がきちんと出ているか
  • ガラスがケイムにきちんと収まっていて、隙間が出来ていないか。


半田付け - Soldering

ケイムを半田でつなげていきます。基本は切れ目の周囲5mmを目安にハンダします。出来るだけ手数を少なく、仕上げます。ハンダの量は、ケイムの継ぎ目が分からないくらいが適量です。

また、半田ごての温度が高すぎたり、半田ごてを一箇所に当て過ぎると鉛のケイムがすぐ溶けてしまうため、注意して進めます。なお、ジンクケイムは溶けないので安心です。


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半田をする際には液体のフラックスを使用します。


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ラインがそろっていない場合は、組んだ後でも木の破片などでケイムを叩くと多少は動かせます。


半田の際には、万が一ハンダの熱でガラスが割れることも考えられるため、パネルの中心から行って行きます。


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ケイムの間に隙間が出来てしまっている場合は、下に紙を引くなどしてハンダがガラスに落ちないようにします。


片面半田状態でのパネル裏返しが最も危険ですので細心の注意を払って裏返し、そして裏面も同様にハンダします。


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ハンダが終わったらパネル四隅の出っ張っているケイムを切断しておきます。



パテ入れ - cementing

養生

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パネルのハンダとフラックスの汚れをシンナーで綺麗にふき取り、マジックもシンナーで綺麗に消しておきます。そしてパテを入れる前に、パテがガラスのデコボコに入らないように養生します。外側のケイムもマスキングテープで養生しておくと、パテのこびり付きを防ぐことができます。

裏面も同様にします。


パテ入れ


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ガラス用のパテを溶剤(ベンジン)で溶いたものを、真鍮のブラシでケイムとガラスの隙間に入れ込んでいきます。


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パテは、初めはサラサラの液体ですが、直ぐに揮発してドロドロになるため、その固まりかけの状態で隙間に入れていきます。


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しっかりパテが入ったのを確認したら、ここでガラスやケイムに付着したパテをブラシである程度除去しておきます。


今回使用した半液体のパテは、極端に柔らかいためケイムの隙間にスムーズに入り込みます。ただ、柔らかすぎる面もあるため、流れてしまったり乾燥時に痩せてしまったりもします。


もう少し固い、粘土状のパテを指やヘラで入れていく手法もありますが、完全に奥まで入れ込むのが難しいです。どちらも一長一短です。


先に裏面にパテを入れ、次に表も同様にパテを入れます。

入れ終わったら、乾燥させるため1~3日程度放置します。



パテの除去

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パテが固まっているか、竹串などで確認します。ある程度固まっていたら、仕上げを行います。あまり寝かせすぎるとパテが固まりすぎて除去が大変なため、その点は注意が必要です。


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養生を剥がし、割り箸の先を尖らせたものなどで、ケイムからはみ出ているパテを切ります。


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そして、あとはひたすら真鍮またはスチールのブラシでケイムとガラスのパテをこすって除去します。特にこの段階ではケイムのパテを完全に除去しておきます。(ガラスはまた別の工程で除去できます。)


スチールブラシは柔らかいガラスの場合傷が付くこともあるため、その場合は使用を控えます。真鍮のブラシはガラスを傷付けることはありません。


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染め - darking

硫酸銅を水で溶いた溶剤で染め上げて(腐食させて)いきます。スポンジの柔らかい側に溶剤をつけ、少し力を入れてケイムをこすることにより、反応して綺麗に染まります。

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先に表面を行い、裏も同様に染めます。


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腐食が過度に進まないよう、直ぐに水洗いします。


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表面の水分をティッシュなどで拭き取り、表面が完全に乾くまで放置します。


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防錆・艶出し用のラストンをケイムにだけ塗り、30分程度乾かします。この際、ガラスに付着しないようにします。


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クリーニング - Cleaning

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光にかざしてガラスの汚れを完全に取り除きます。

ここでパテ切りを再度行い、あとはひたすらガラス表面のパテをクリーニングします。


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完成です。


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まとめ - Conclusion

シンプルなパネルなので特別大変なことはなかったですが、以下の点を今後の課題、反省点として挙げておきます。


  • デザインはイマイチ。ステンドグラスはデザインが全て。ただ、先方の意向などもあるので。理想通りにいかないことが多い。
  • ガラス選びはもう一工夫できたのではないか。
  • 組む時にもう少しラインを揃えておいた方が、ハンダで苦労しない。
  • ハンダの量が多い。もう少し少なくできる。

以上。



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