3mmのケイムで組むステンドグラス

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3mm幅のケイムで組む

普段使っているマツムラメタル製のフラットケイムには、FH3~FH15までのサイズがある。一般的にはFH5~FH12位までが使われることが多く、幅が細すぎたり広過ぎるケイムはあまり使われない。


特に、FH3やFH4については、殆ど使われることがない。幅が細くて極端に組み辛いからだ。のみこみ(ガラスがケイムで隠れる部分)が殆どなく、ガラスを正確にカットし、隙間なく組んでいかなければ、直ぐに隙間が空いてしまう。


特に、商業的にステンドグラスを制作している工房であればあるほど、極端に作業効率が悪いこれらの細いケイムがメインで使われることは、ほぼないと言っても過言ではない。


ただ、だからこそ逆にやってみたらどうなるのか?という衝動に駆られてしまう。今までのステンドにはない繊細な表現が可能であったり、新たな気付きがあるかもしれない。


そこで今回、最も細いケイム、FH3を使った組みを試してみることにする。



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左からFH3、FH6。FH12。FH3だけが異様に華奢なのがわかる。


ケイムの幅が変わっても、ハート(芯)の幅はそんなには変わらない。ただ、カタログスペックでは、ケイムの幅に関係なくハートは1.2mmということになっているが、見て分かるように明らかに違う。FH3は、大よそ1mmほどだ。つまり、のみこみは左右1mmずつということになる。


加えて、ハート以外の上下の辺の厚みも、FH3はかなり薄い。FH3とFH4だけは、それ以上の幅のケイムと違って、まるで作りが違うケイムなのだ。



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という訳で、早速作っていく。今回は初めてFH3で組むので、デザインは簡単なものを。外枠がFH6hで、中がFH3s


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敷き紙。グレーの部分がケイムの幅になっている。



ガラスカット・組み

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印刷・カットした型紙に沿って、正確にガラスをカットする。今回に限っては、小さくなるとアウトなので、ジャストサイズかそれ以上の大きさで丁寧にカットする。


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ルーターでガラスを研磨し、敷き紙の上に並べてみる。型紙に合わせてガラスの形を確認するより、敷き紙に乗せて確認した方が正確に形を確認できる。


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組み。隙間なく組むためには、ケイムも正確に曲げなければいけない。



ハンダ

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組みが終わったら、ハンダ。先ずは表裏を点付け。


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点付が終わったら、両面に全面ハンダを施す。


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ハンダ完了。



パテ・仕上げ→完成

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パテを入れ終わったところ。のみこみが殆どないため、そのままではハートが丸見えだが、パテを入れることにより、綺麗に隠れる。


なお、今回はよりパテをキッチリ奥まで入れ込むために、パテにベンジンを入れ、かなり柔らかくしてから指での詰めを行った。



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パテ入れから3日経過。パテがある程度乾いたので、仕上げを行う。ケイムを真鍮ブラシで磨き、硫酸銅で腐食処理。本題とは関係ないが、今回はかなり良い染まり具合になった。


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完成。


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ケイムが綺麗な玉虫色に染まったのが、この角度からは良く分かる。



振り返りなど

ケイムが扱い辛い。

冒頭で述べたが、FH3はケイムがかなり華奢であり、また、ケイム自体の作りが悪い。具体的には、ハート以外の上下の辺の厚さが全然違うものがある(厚みにバラつきがある)。普通の感覚でハンダすると、たやすく表面が溶けてしまう。

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ケイムが溶けたところ(1と5の間)。この後、ケイムの上っ面だけを張り付けて修理したが、綺麗には直らなかった。


コテを低温で、かつ手早くハンダ付けしなければいけない。同じ個所に何度も手を入れるのも、避けた方が良い。


また、今回はケイムは入れ込みで組んだが、開いて閉じると、もう原型をとどめていない感がある。そのため、線が綺麗に出ない。太くなったり細くなったりするのだ。


ケイムの揺らぎが大きい

ケイムで組んだステンドグラスは、コパーと違って均一で綺麗な線が出るのが大きな特徴だ。だが、FH3で組むと、コパーに近いテイストの仕上がりになってしまう。


今回は組み方が雑だった、というのもあるが、ケイムが変形しやすいのと、全面ハンダの際のハンダの軽微なはみ出しが原因で、ケイムの線が揺らいてしまう。カチッと仕上げるには、腕が必要だ。細心の注意を払って、精密に組んでハンダ付けをする必要がある。


ただ、この揺らぎは、決して欠点と言う訳ではないので、好みの問題だろう。個人的には悪くないと思っている。


ガラスカット・ケイムの成型がシビア

のみこみは1mmだが、ガラスの一辺が0.5mmずつ小さくなって、それが片側に寄るともう1mmなので、相当にシビアだ。1mm以上のハマ・カケもアウト。コバが斜めになっているのも厳しい。切り直しだ。


通常、ステンドグラス作りは、ケイムののみこみを利用してガラスを小さめにカットし、作業効率の向上を図るのが定石だ。だが、それができない。ジャストサイズでカットし、ケイムも線通り正確に曲げなければ、直ぐに隙間が空いてしまう。兎に角シビア。


希少価値

中をFH3だけで組んだパネルは、この世に殆ど存在しないと思う(1度ぐらいしか見たことがない)。希少価値!?はあるのかもしれない。それには、FH3だからこそできるような表現が必要かもしれない。


手間と時間が掛かるの大きなものは作るのが大変だろう。精密なモノを作るのに向いているかもしれない。


練習になる

ずっとFH3で組んでいたら、普段よく使うFH5やFH6で組むのは相当に容易く感じるだろう。重いバットで素振りするのと同じようなもの。



別の記事でもう少し大きなFH3のパネルが進行中だが、一応、(相当)頑張れば組めるには組めることがわかったので、一安心だ。


今回で少し手応えがあったので、近々また、小さめの別のパネルも作ってみようかと思う。



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