2液を使ったステンドグラスの習作 - 制作~完成・評価

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ガラスカット・研磨

前回まででデザイン・製図・ガラスが決まっているので、今回はガラスカット・組み等を行い、完成を目指す。


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先ずはガラスカット。今回は、白いガラスだけは複雑なカタチをしているが、それ以外は特に何てことのないカタチ。


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ガラスカット・ルータでのガラス研磨が完了。


白いピースの無理のある形の箇所は、ガラスカッターで粗く切った後に、ルーターでかなり削っている。手間はかかるが、ピース数が少ないので大したことはない。



組み・ハンダ

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内側をFH6で組む。直線はハード、曲線はソフトを使用。


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組み終えて、表裏の点ハンダまで終わったところ。光にかざしてみる。


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これはこれで悪くない。



2液・ハンダ、パテ入れ・仕上げ

さて、ここからが本番の作業。ケイムを2液で張り付けていく。

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張り付けるケイムの加工。3mmケイムの芯をこのようにニッパーで切り、上下の面だけを張り付けに使う。6mmケイムも同様。


30分で硬化が始まるという時間の制約があるため、張り付けは時間との戦い。きちっとケイムをカットして、形を整え、全てを張り付ける箇所に当ててみる必要がある。入念な事前準備がとても大事。


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先ずはパネルの真ん中の部分に6mmケイムを張り付ける。この画は、張り付け終え、点ハンダで固定した直後。


2液は、ガラス面だけに塗り、上からケイムを乗せるようにして張り付けた。初めてなので仕方がないが、2液が大きくはみ出たり、色んな箇所に付いてしまっている...。


混合後、30分程度で硬化が始まり、60分後にはほぼ硬化が終わるタイプの2液を使っている。まだ固まり切っていない段階であれば、カッターなどで比較的容易に樹脂をカットできるので、できるだけそうしておいた方が良い。


ガラスに付いた2液は何とかして除去すれば良いだけのことだが、ケイムに付いたものはそうはいかない。ケイムにこの透明な樹脂が付着すると、その箇所を特定するのがかなり困難なのだ。全面ハンダの際の妨げになるので、先ずは付かないように細心の注意を払うことが大事。


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次に3mmのボーダー部分の張り付け。このようにガラスに2液を塗り、その上にカットしたケイムを乗せていく。


ケイムを等間隔でズレのないように張り付け、乾いたころに点ハンダを施す。ケイムは芯を残してあるが、その芯の残し具合も大事なことが良く分かった。周りの高さと合わせるか、少し低くする必要がある。周りより高くなってしまうと、平置きした時に安定性を欠いてしまうのだ。


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表面だけ張り終えたところ。裏面も同様の作業を行う。


30分の作業時間で全てのケイムを張り付けるのは厳しいので、表は、真ん中・左・右の3回に分けて一連の処理を繰り返した。


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両面の張り付けが完了。


中央の白ガラスの箇所は、下紙があまり透けない。表は下紙と多少ずれても良いが、裏は表と合わす必要があるので、その点が難しい。裏は、今回は時々裏返して光にかざして確認しながら、ずれないように合わせた。


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全面ハンダを施していく。


案の定、2液が付着してしまった箇所にはハンダが一切乗らない。ただ、溶けたハンダの温度で樹脂が溶けてしまうことはなく、柔らかいゴム状に剥がれてくれるので、その都度2液を剥がして全面ハンダしていけば、何とか終えることはできる。


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両面の全面ハンダが完了。3mmケイムの箇所は悪くないが、真ん中の6mmケイムのところはあまり綺麗ではない。


一番気になっていたことの一つ、ハンダの熱による、2液が硬化してできたエポキシ樹脂への影響は、特に見られなかった。ハンダの熱で溶けたり異臭を発することがなかったのだ。これは意外だった。


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ハンダ後、熱湯と中性洗剤でパネルを良く洗い、乾燥後にパテ入れをして5日程放置。そのあと、軽くケイムとガラスを掃除して、硫酸銅でのケイム腐食作業を。


この辺りはいつも通りの作業。2液で張り付けた箇所のケイムも、特に普通にパテ入れをしてある(普通にパテ入れができた)。


今回のケイムの腐食具合は、可もなく不可もなくといった感じ。この後、ガラスをクリーニングして、無事完成。



完成

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夕方の、弱めの西日にて。


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振り返り

想定通り完成することはできた。トピック別に振り返ってみる。


このテクニックはどこまで使えるのか。

今回が初めてなので手間取ったというのはあるが、使うことにより、時間短縮になることはあまりない気がする。どうしても2液を使ってしたい表現がある時のテクニックと考えるべきだろう。


使い勝手、メリット・デメリット。

どうしても2液がケイムからはみ出して、ガラスに付いてしまう。これは避けられない。そのクリーニングがかなり大変だ。ケイムに付くと尚更大変で、全面ハンダが汚くなることは確実だ。


2液の量を極力少なくすることで、ある程度は回避できると思うので、今後はその点に注意を払いたい。今回使った量の半分以下でいける気がする。


また、今回は行わなかったが、順序として、事前にケイムに全面ハンダを施しておいてから、それを張り付けた方が良いのかもしれない。そうすれば、少なくとも張り付けるケイムの表面への2液の付着はあまり気にせずに済む。ただ、そうすると、ケイムへの腐食時に影響が出そうだが...。全面ハンダ時に苦労するよりはマシだろう。


今回は、3mmケイムの箇所の仕上がりが悪くなかったので、それが良かった。3mmのケイムで組むのはかなり大変なので、3mmケイムの張り付けは使えるな、という感触を得ることができた。


このテクニックにより表現の可能性はどの程度広がるか。

広がるとは思うが、積極的に使うのではなく、必要に迫られて使うものなのだろう。あくまで補助的なものだ。





2液とは関係なく、ステンドグラスとしての仕上がりに関しては、3mmケイムのボーダーの箇所はあまりステンドグラスっぽくないなと思った。何か他の方法、真鍮の枠を使ったりしても代用できそうな気がする。ガラスは、3色とも相変わらず綺麗だった。


技術的には、張り付けの6mmケイムを全面ハンダするときに、ケイムを溶かしたのがマズかった。ハンダごてを一か所に止めず動かしていたつもりだが、結果的に一か所に熱が加わり続けてしまい、溶かしてしまった。当たり前のことだが、肝に銘じて同様のミスを繰り返さないようにしたい。あとは、極小ピースが潰れ気味なのが良くなかった。




試してみたいテクニックのようなものがいくつかあって、習作を繰り返しているが、毎回学ぶことが多い。今回も大いに勉強になった。近々、また別の習作を作る予定だ。今度のテーマは、「サンドブラスト」だ。


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