ステンドグラスの仕事を続けるには

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運良くステンドグラスに関わる仕事に就けたとして、それを継続していくための心掛けなどをまとめてみた。


仕事に就くよりも続けることの方が難しいと思う、今日この頃。この記事は、自分自身の今後を考えるきっかけ・道標でもある。




はじめに

自分自身、ステンドグラス・ガラスに関わる仕事に就いて、もうすぐ3年が経つ。


最初の2年は地方のステンドグラス工房でのアルバイト。後の1年は都内のステンドグラス制作会社勤務。現在もこの会社に在職中である。ステンドグラス制作会社といっても、ステンドグラス以外の建材用ガラス全般を扱っており、自分は専らステンドグラス以外のガラス製品の制作を担当している。ステンドグラスを全く制作していない、と言う訳ではないが、メインはフュージング関係や、加工板ガラスなどだ。


元々はステンドグラスを作りたくて入った会社であるが、入る前から、直ぐにステンドグラスをバリバリ作る側には入れないことは分かっていた。


それでも、特別にデザイン・制作されたステンドグラスを毎日目にすることができ、制作技法も好きなだけ学べるという環境に魅力を感じたし、現在もその点はある程度満足している。


ただ、残念ながら労働環境が悪く、人の入れ替わりが非常に激しい。そのため、この先ずっと長く続けられるような職場では決してない。いきなり首になる可能性もそこそこあるし、この先辞めたくなることもあるだろう。会社が倒産する可能性も十分にある。






以前に、ステンドグラス職人になる方法という記事を書いた。

今回の記事は、その続編とも言える。


なるにはなったが、続けられそうにないぞ!、将来はどうしたら良い?不安がいっぱい!というような、切実!?な想いに対してのヒントとなるようなことを、自分なりに整理・考察し、綴ってみようと思う。一番は、自分自身のために・・。仮に現状に満足していても、その次のステップを、常にアンテナを張って考え続ける必要がある。そうすれば、いざという時に慌てずに済む。そんな人のためにも。


もう一度言うが、このような仕事は、なることよりも続けることの方が遥かに難しいと思う。


頼み込めば、どこかの工房で働かせてもらえるかもしれない。たまたま求人を目にしてすんなり入り込めるかもしれない。自宅の一室で一人で始めることも可能だ。


しかし、ずっと続けるにはそれなりの運や根性やら何やらが必要なのだ。そんなことを、最近良く考えている。





ステンドグラス業界の現在とこれから

以前にも載せた図だが、ステンドグラスを取り巻く業界はこのようになっている。


この中の一番上、ガラスメーカーで、最近大きな異変が起きている。


米の大手ガラスメーカー、ブルズアイとウロボロスの色ガラスの多くが、一時的に生産停止を余儀なくされているのだ。


色ガラスの製造過程では、発色させるためにヒ素などの人体に有害な物質が使われるが、それが大気中を引き起こしていると当局に指摘され、排気フィルターの設置を義務づけられる事態となったためだ。


加えて、更に衝撃的なニュースなのが、世界最大のステンドグラス用ガラスメーカーである米スペクトラム社の、突然の廃業だ。主な理由は、売り上げが最盛期の40%まで落ち込んでいることと、前述の環境問題との絡みだ。(→ スペクトラム社


他のメーカーの動向も気になるところだが、ステンドグラス用ガラスの多くがアメリカで作られているため、業界に激震が走っている。


図右側のハウスメーカーについては、ステンドグラスが採用されやすい新築物件の着工棟数が、不景気、少子高齢化に伴って、最盛期(1996年)の半分程度まで落ち込んでおり、今後も減少傾向なのは容易に想像できる。


また、ガラスに加えて、鉛の有毒性も近年問題になっており、一部のハウスメーカーでは全面的にステンドグラスの採用を見送っているところも出てきている。






このようなことからも分かるように、ステンドグラス業界は、疑う余地なく斜陽産業だ。スペクトラム社の売り上げと同様、日本のステンドグラスの売り上げも、最盛期の頃と比べれば、半分以下に落ち込んでいる。


生活必需品には成りようがないし、明らかな贅沢品なのだから景気に左右されるのは仕方のないことではあるが、寂しい現実である。


建築物にステンドグラスのパネルを入れる、という話ではそんな感じなのだが、全く角度を変え、ステンドグラスを教える仕事という観点で見ると、これは中々需要があると言える。


都内にも大小合わせて何十というステンドグラス教室があるが、人が集まらずに困るという話はあまり聞かず、逆にもう定員オーバーで受け入れが難しい、というのは聞いたりするのだ。


ただ、ステンドグラスを作りたいという人間が教えることをメインにしてしまうのは、生活の面では良いかもしれないが、それで満たされるかと言えば、人それぞれだろう。


週に何日か曜日を決めて教室を開けば、ランダムに入ってくる受注生産の特注ステンドグラスと違って、一定の収入が得られるので経営的には良いが、先生になりたくてステンドグラスをやっている人間などは皆無で、生活の為にやらざるを得ずやっている場合が多いからだ。


先生をやれば周りからもチヤホヤされ、己の自尊心のようなものはいくらか満たされるかもしれないが、それだけで本当に良いのか。


先生業で得られるのは、お金と自尊心の充足と人間関係の広がり、教えるスキル・ステンドグラス全般の知識など。


逆に失うのは、切羽詰まった緊張感や、ステンドグラス製作に対する情熱などだろうか。教室で経済的に満たされると、良いステンドグラスを創ろうという意欲がなくなる。また、教室は生徒さんが居るので、途中で投げ出せない(必ず生徒さんが最優先になる)。


制作専門の工房にも少し目を向けてみよう。現在の日本におけるステンドグラス制作工房の多くは、ステンドグラスの最盛期を経て現在もなんとか経営を続けている工房が殆どだ。そこの経営者たちは、皆50代~70代の高齢者。そして、その下の40代~20代の姿は殆ど見えてこない。今後、大手のステンドグラス工房が存続するためには世代交代が必要だが、それがあるのかどうかも、正直言って不明な状況である。






・・・これらの状況を強引にまとめると、ステンドグラス業界は、目新しい話題もなく硬直化しており、緩やかな下り坂を下っているように感じる。


そんな業界に風穴を開けるにはどうしたら良いのか? 一言で言えば、「センス」が大事なんだと思う。


売り方としては、大手の工房では基本的に大手ハウスメーカーとのパイプを重要視した、言わばB2B(企業間取引)がメインだが、これからはB2C(企業と消費者との取引)で勝負した方が良いように思える。そこでは売り方にセンスが必要になる。わがままで目移りの激しい消費者を相手にするからには、ステンドグラス事体にセンスが必要なことは当然として、売り方にもセンスの良さが求められる。


大手ハウスメーカーは、全て合わせてもシェアは3割程度。そこを相手にして、緩やかに死にゆくよりも、ネットを大いに活用して顧客に直接ステンドグラスの価値を訴えかけるような営業方法の方が、手ごたえがあると思う。


そこで顧客が求めているものを先取り、何処にでもあるような当たり前のステンドグラスではなく、まだ見たことのないサムシングを打ち出せれば...儲からないとは思うが...、...きっと楽しいはずだ。

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将来の展望、とり得る選択肢

明確な展望などはまったくないが、ぼんやりと見えるものならある。試しに明文化してみよう。なお、自分のような組織に属している人間を想定して書いているが、それ以外の人にも参考になる部分はあると思う。


  • 現在のまま続ける。
  • 特殊な仕事であるが故、職場に普通の人はほとんどいない。良くも悪くも、まともじゃない人ばかり。一筋縄ではいかない人たちばかり。自分自身も傍から見れば、きっとそうなのだろう。


    当然人間関係もスムーズにはいかず、ストレスを抱えることになる。やりきれない思いが鬱積して、心が折れそうなこともあるだろう。


    ただ、それでも何とか続けている人が、今の先輩達なのだ。その事実だけは、はっきりと心に刻んでおきたい。


    ステンドグラスの仕事をずっと続けたいのならば、馬鹿になって続けさえすれば、会社が倒産しない限りはある程度のスキルを得てこの仕事を続けることはできる。職場によってはそれと引き換えに失うものも多いかもしれないが...。


    単なる職人を希望する人には、この道をお勧めする。



  • 他の工房へ転職する
  • 求人が出ていることは皆無だが、当てがありそうなら考えても良いだろう。


    個人的には、現状、関東近辺では、行きたいと思う・かつ行けそうな他の工房は...一切ない。



  • 独立する。
  • A.一人で独立する。

    先輩で少し前に独立した人がいるが、何とかやっている。やれないことはない。

    ただ、これは人づてに某業界関係者から聞いた話だが、過去数年の実績で言うと、独立して成功している工房はかなり少ないようだ。ある程度成功しているところも、大手の下請けや教室ばかりで、面白い仕事はしていないところが多いと聞く。


    仮にあなたが凄腕のステンドグラス職人だとしても、それだけで独立して食える訳ではない。それで食えていない人はごまんといる。一人でやっていくには、それとはまったく別の能力がいるのだろう。現実的に考えると茨の道かもしれないが、知恵を振り絞って、前向きに頑張っていくしかない。


    専業ではなく、ダブルワークという手もある。趣味だけに止めておくのは面白くないから何とか仕事にしたいけど、都内で場所を借りるのは厳しそうだし、そもそも腕もノウハウもまだないし・・。そんな人は、他に仕事をしながら、仮想店舗を構えて自宅で制作する、というのは面白いかもしれない。


    過度に収入にこだわらなくても良いので、本当に作りたいものだけ作れそうだし、もしに波に乗ってきたら、専業に切り替えれば良い。社会的にはまだ認知されていないが、そんなマルチな働き方だって、まったくアリだと思う。


    B.気の合うパートナーを見つけて独立する。

    一人での独立と比べて、リスクを分散できる。デザイナーや営業職の人は、独立しても制作ができないので、誰かと手を組まざるを得ない、というのもある。そして何よりも、一人じゃないから、心強い。なおこの場合のパートナーは、夫婦は含まない。


    ただ、この狭い世界で気の合うパートナーを見つけるのは至難の業だが...。もし奇跡的に、バッチリ気の合う、ずっと一緒にいてもストレスにならないパートナーに出合えたら、この選択肢は最強だろう。


    ちなみに、このパターンで独立した話を過去に何件か聞いたが、上手くいった試しは一切ないようだ。業界に詳しい先輩も、絶対無理だから...と言っていた。何となくわかる気がする...。



  • 仕事でのステンドグラスを辞め、趣味に切り替える
  • 好きなことは仕事にしてはダメなのか?中途半端に好きならば、しない方が良いかもしれないが、本当に好きなら、仕事にするしかない、と思う。


    ただ、環境はとても大事。人間は、いとも簡単に環境に染まる生き物。どうにも抗えない。学生時代に夢見た世界との乖離、理想と現実のギャップ、止めどなく生まれる葛藤。泥水をすするような日々...。そんな中から生まれるのは一体...。


    日々、年々移り変わってい周囲の状況や加齢による変化もある。当然人間関係もだ。このような状況の中では、続けることより辞める事の方が重要になってくる場合もある。


    続けることは大事だが、辞める事も同じくらい大事。とにかく自分を大切にするように。5年かけて心が病むと、復帰するのに最低5年掛かると思った方が良い。そうなる前にきっぱり辞めよう。


    辞めたからと言って、全てが終わる訳ではない。むしろ、そこから新しい別の何かが始まるのだ。勿論、再度この世界に戻ってくることも、不可能なことじゃない。





大切なものは何か。

一番大切なものは「心」だ。


言い換えると、「魂」「センス」「イマジネーション」「こだわり」「自尊心」などだ。


どのような仕事でもこれらは必要だが、特にモノ作りに携わる人間は、これらがなくなったら死んだも同然だと思う。


従って、どのような道に進むにしても、これが著しく傷付けられるような環境は、絶対に避けたい。ストレスフルな状況に長期間いると、本人も気付かない内に徐々に心が削られるからタチが悪い。心を大事にして、既存の概念や世間体にとらわれず...。これもう、ある程度開き直って覚悟を決めるしかない。


そのために大事なのは、自分の「コア」を見極めること。本当にしたいことは何か。どう生きたいのか。ある程度のリスクを承知でステンドグラスを創る仕事をしているのに、気が付いたらその辺のサラリーマンと同じようになっちゃっていたとしたら、それはもう、何ともつまらないことだ。

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おわりに

主題から若干それた感があるが、最後にこの言葉を。


A lot of times, people don’t know what they want until you show it to them.

多くの場合、人は形にして見せてもらうまで、自分は何が欲しいのかわからないものだ。

                      - Steve Jobs (スティーブ・ジョブズ)


人の求めるものを先取りし、それを効果的に打ち出せれば、きっと道は開けると思う。


そのために、「心」を大事にして、あえてあまり先を見過ぎず、短期的な目標を一つずつクリアしていくことが大事だと思う。今の自分がすべきことも、これなのだと思っている。


一般論としての、ステンドグラスの仕事を続けていくための考えなどを綴れればと思ったが、最後は自分の想いのようなところに不時着してしまった感がある...。


...ともあれ、少しでも将来について思い悩む方が見て、何らか参考になる箇所があれば幸いである。


人生は続く。



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