サンドブラストにはどんなマスキングシートが良い?
きちんと機械でカットできることは大前提として、その後の工程のあらゆる面で扱いやすく、作業に時間が掛からない。
高圧のサンドブラストに耐えられる
この2点が特に大事だと思う。
コストはそこまで重要ではない。大量に作業するなら別だが、小さな面積に使うマスキングシート代が製造費に占める割合は、たかが知れているからだ。安いに越したことはないが、性能第一だ。
なお、サンドブラストのマスキングには、紫外線で硬化させる露光フィルムもあるが、今回は普通の良くある塩ビ系のシートの話である。
また、基本的に、素材はガラス、形状は平面にしかサンドブラストをしないので、平面ガラスに対するマスキング性能の比較となる。
マスキングシートの種類
今回性能を比較するマスキングシートは、以下の5種類
屋外耐候中期(4年)タイプカッティング用シート
最もポピューラーで良く売られている、一般的なカッティング用シート、カッティングステッカー。ノーブランドと紹介されることが多いが、今回のものは台紙に韓国のLG HAUSYS社の名が入っているので、この会社が開発したものとわかる。
日本ではHi Lucky(ハイラッキー)という名称で、桜井という会社が扱っているものと同一の模様。
カッティングシート(中川ケミカル)
「カッティングシート」という名称は今や一般化しているが、この中川ケミカル社の商標登録である。
そんな、日本のこの業界のリーディングカンパニーの看板商品。色がピンクなのに特に意味はなし(沢山の種類の色がラインナップされている)。種類が色々あるが、今回のものはレギュラータイプで強粘着のもの。
イージーレジスト
サンドブラスト用として売られているマスキングシート。こちらも韓国のLG HAUSYS社製。イージーレジスト以外の名称でも売られているようだが、シートがこの色でサンドブラスト用であれば、同じものだと思われる。
マスキングシートSM
耐熱塗装用のマスキングフィルムとして売られているもの。サンドブラストにも使用可能と紹介されている。
マスキングシートSMの名称で売られているものを購入したが、耐熱・塗装用のマスキングシートで検索するとノーブランドで同じ色のシートが出てくる。それらは、すべて同じものだと思われる。シートの裏にメーカー名がないため製造元は不明だが、日本の桜井という会社が製造している模様。
パワーマスキングシート(PWM)
上の他のシートは全て塩化ビニルだが、これだけはウレタン製の分厚いもの。墓石、大理石、表札などの硬い物にブラストをする用。マスキングシートSMと同じ場所で売られていた。
使ってみる
大まかな手順
Illustratorのデータをもとに、カッティングプロッタでマスキングをカット。
↓
カス取り。ガラスへの貼り付け。
↓
サンドブラスト。
今回はマスキングシートの性能を測るために、かなり細かいカットを行ってみた。
比較結果
結論から言うと、最も適しているのは「イージーレジスト」、という結果になった。詳細は以下の通り
シート | 厚み(実測・接着剤込)・素材 | 粘着性 | 耐久性 | 伸縮性 | 耐熱性 | 再剥離性 | カス取り | 細部カット | 価格 | コメント |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
耐候4年 |
0.08mm 塩化ビニル |
◎ | △ | △ | △ | × | △ | △ | ◎ | 再剥離性が低すぎるため、貼り間違うと修正不可。強度もやや弱い |
カッティングシート(中川ケミカル) |
0.12mm 塩化ビニル |
◎ | 〇 | △ | △ | ◎ | ◎ | ◎ | △ | 総じて優秀。裏紙から剥がれ易すぎて扱い辛いのだけが難点。 |
イージーレジスト |
0.12mm 塩化ビニル |
◎ | 〇 | 〇 | △ | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | サンドブラスト専用なだけあり、総合力が高い。 |
マスキングシートSM |
0.11mm 塩化ビニル |
〇 | 〇 | ◎ | ◎ | ◎ | △ | 〇 | △ | 伸縮性がありすぎて扱いづらい場面あり。耐熱なのは良いが、価格の割に性能はやや低め。 |
パワーマスキングシート |
0.38mm ウレタン |
◎ | ◎ | 〇 | 〇 | × | × | × | × | 強度は抜群だが、そもそも機械でカットが上手くできない。広い面積を深く掘るとき専用。 |
特記事項
細かい作業に対応できるのは、カッティングシート(中川)、イージーレジスト、マスキングシートSMのみ。
カッティングシート(中川)、イージーレジストは、性能的にあまり差はない。
浅堀りである程度大きな図柄であれば、どんなマスキングシートでも作業はできる。
深掘りをする場面でも、パワーマスキングシートを使うしかない場面は、ほぼない(要するに不要)。
イージーレジストさえあれば、ほかのシートは不要。強度を出したいときは、重ね張りする手もある。
まとめ
サンドブラストの作業をする中で、マスキングシートの性能は作業時間や作業性・仕上がりに直結する非常に重要な要素である。
世に出回っている5種類のマスキングシートを比較した結果、イージーレジストが総合的に最も適していると判断した。これだけあれば他は不要。
以上。