ステンドグラスには色々な様式・スタイルがある。今回はそれを12に分けてみた。
どんなステンドグラスを入れようかな?と検討中の方は、参考にしてみてはいかがだろうか。
アール・ヌーヴォー | 01 Art nouveau
「新しい芸術」として、19世紀末~20世紀初頭に掛けて、世界的に盛り上がったデザイン様式・ムーブメント。草花をモチーフにした有機的で流れるような曲線が大きな特徴。
背景として、産業革命を経て機械による大量生産品があふれかえったことへの反発でもあった。
当時、ジャポニズムとして注目されていた日本の浮世絵などの影響もうけている。
art:芸術、nouveau:新しい、を意味するフランス語。
ステンドグラスのデザインと相性が良いため、現代でも多用される。シンメトリーのデザインとして描かれることが多い。
エミール・ガレ ドーム兄弟 ルネ・ラリック オーブリー・ビアズリー チャールズ・レニー・マッキントッシュ アルフォンス・ミュシャ ユーゲント・シュティール アントニオ・ガウディ
萬翠荘
国立科学博物館
旧内田定槌邸(外交官の家)
旧根津嘉一郎別邸(起雲閣)
旧根津嘉一郎別邸(起雲閣)
アールデコ | 02 Art Deco
アール・ヌーヴォーに代わる様式として、20世紀初頭に流行ったデザイン様式。 有機的なアール・ヌーヴォーと逆の、幾何学的なデザインや記号的表現であること、舞台をアメリカに移しつつ流行したことが大きな特徴。 ステンドグラスで扱いやすい直線が多いスタイルなので、良く使われる。やや古風な、いわゆる「モダン」なスタイル。
クライスラー・ビルディング チャールズ・レニー・マッキントッシュ ウィーン分離派 セセッション
旧井元為三郎邸
大阪取引所
聖徳記念絵画館
大正ロマン | 03 Taisho romance
明治と昭和に挟まれた、たった15年しかない大正時代。その時代性を象徴した、しっとりと落ち着いていて、情緒的で、「ハイカラ」な雰囲気が漂う感じのスタイル・デザイン様式。大正ロマンと昭和モダンは、大正時代が短かったこともあり、同列に扱われることが多い。 19世紀頃にヨーロッパで流行ったる「ロマン主義」の影響を受けていることから、こう呼ばれる。 その何処か寂しげな華やかさは、近代化に向かう日本国の混沌や不安、激動と希望を体現しているようでもある。 西洋が発祥のアール・ヌーボーやアール・デコなどの様式が、日本人のフィルターにより独自に解釈されて出来たスタイルとも言える。
、昭和モダン 昭和ノスタルジー 竹久夢二 ハイカラ はいからさんが通る 和洋折衷 大正デモクラシー
旧川上貞奴邸
横浜市開港記念会館
ここから下は、昭和モダンなテイストのステンドグラス。
旧岩崎邸庭園
晩香廬
小笠原伯爵邸
学士会館
ティファニー | 04 Tiffany
ティファニー方式を生み出した、ステンドグラス界の偉人、ルイス・カムフォート・ティファニー。その彼が確立した様式。 オパールセントグラスという乳白色の入ったガラスを使うスタイルや、銅テープをガラスに貼ってそれをハンダ付けするというカッパーホイル技法が大きな特徴。 ガラスの美しさを最大限に活かし、絵付けは最小限に抑えている(殆ど使われない)。 現代では、ティファニーランプ=ティファニースタイルと呼ばれることが殆どだが、ティファニーは平面の作品も多く残している。 大きなくくりではアール・ヌーヴォーに含まれる。
ティファニーランプ オパールセントグラス カッパーフォイル コパー ティファニーガールズ クララ・ドリスコル ジョン・ラファージ
ヴィクトリアン | 05 Victorian
英国のヴィクトリア女王時代の建築様式として、ヴィクトリアン様式があり、その影響を受けて(対抗して)アメリカンヴィクトリアン様式が生まれた。
ここでのヴィクトリアンは、主にアメリカンヴィクトリアン様式の建物に入っているようなステンドグラスを指している。他であまり語られているのを聞いたことがないが、確かに間違いなくこの独特の様式のステンドグラスは存在している。
アールヌーボーとアールデコを足して、更に煌びやかにしたようなテイスト、装飾的でロマンチックなデザインが大きな特徴。
より具体的な特徴として、放射状の直線や、小さなジュエルが多数入っていることが多い(気がする)。
ロココリバイバル ゴシックリバイバル
ゴシック | 06 Gothic
ステンドグラスが最も盛り上がった時代とも言える、12世紀から15世紀頃、中世ヨーロッパ。その頃の、ステンドグラス=神々自身=教会だった頃のスタイル。一般の方が思い浮かべる、ザ・ステンドグラスは、この様式なのかもしれない。
ゴシック様式とは、主に建築様式を指す言葉で、外側から建物を支えるアーチや、ステンドグラスが入るような大きな窓が特徴と言える。
フランスのノートルダム大聖堂、イギリスのカンタベリー大聖堂、ドイツのケルン大聖堂などが代表的なゴシック建築で、そこに入っている沢山のステンドグラスのようなテイスト・様式のステンドグラスを指す。
シャルトル大聖堂 ロマネスク ゴート族の様式
アーツ&クラフツ | 07 Arts & Crafts
19世紀後半にイギリスで起きた美術工芸・デザイン運動。イギリス人で詩人、思想家、デザイナーであるウィリアム・モリスが主導した。
ヴィクトリア朝の時代、産業革命の結果として大量生産による安価な、しかし粗悪な商品があふれていた。モリスはこうした状況を批判して、労働の喜びや手仕事の美しさを尊重した中世の手仕事に帰り、生活と芸術を統一することを主張した。
その思想と実践は各国に大きな影響を与え、20世紀のモダンデザインの源流にもなったと言われている。
彼が設立したモリス商会では、装飾された書籍(ケルムスコット・プレス)やインテリア製品(壁紙や家具、ステンドグラス)などが製作された。
ステンドグラスの特徴としては、工芸的で温かみがあり、素朴なテイスト。大抵は絵付けがされている。古き良き時代に戻ろうとする、いわゆる回顧主義的とも言える。
アールヌーヴォーに近いが、違いとしては、より直線的で・手作り感のあるスタイル。アールヌーヴォーより時代的には前で、大きな影響を与えている。
チャールズ・レーニ―・マッキントッシュ バーン・ジョーンズ
フランク・ロイド・ライト | 08 Frank Lloyd Wright
稀代の天才建築家、フランク・ロイド・ライトが、ステンドグラスに凝っていた時期が少しだけある。その時に作られたステンドグラスの形式。斜線と粗密を効果的に使い、魅力的なデザインを多数生み出した
彼曰く、「デザインとは、自然の要素を純粋に幾何学的な表現手段によって抽象することである」とのこと。
プレイリースタイル(Prairie Style) 近代建築の3大巨匠 ロビー邸 矢羽根
現代ステンドグラス | 09 Modern stained glass
分かり易く言うと、よくある均一なケイムの線でガラスが区切られた「普通」のステンドグラスから、もう一歩進んだステンドグラス。 ケイムの線に強弱を付けたり、ケイムの線をガラス上に偽装したりする、プラスアルファの表現・技法が加えられている。 元祖はドイツで、シュタイターやシャフラットなど現代ステンドグラスの巨匠と呼ばれる作家が多数いる。それを真似て、日本でも一部の人によって結構盛んに作られている。
ヨハネス・シュライター ルートヴィッヒ・シャフラット ゲオルグ・マイスターマン ヨハン・トルン・プリッカー 佐藤新平 高見俊雄
ヨハネス・シュライター作
ゲオルグ・マイスターマン作
ルートヴィッヒ・シャフラット作
絵画調 | 10 Painting style
本格的な絵付けが施された、教会などで良く見るステンドグラス。それはもう、筆でバリバリ描き込んでいる、画家の仕事的なステンドグラス。テイストが重いので、やはり教会に似合う。
日本で普通に家に入れるステンドグラスとしては、殆ど用いられない。理由は、高価であり、家にあまり合わないから。
ステンドグラスの本流でないが、ケイムのラインに上手く馴染んだ絵付けのステンドグラスは非常に綺麗。日本製の高レベルな絵付けステンドは見たことないので、外国製のモノを買ってはめた方が良い。
シルバーステイン エマイユ グリザイユ エナメル デカダンス フランツ・クサヴァー・ツェトラー フランツ・メイヤー ミュンヘン
アニヴェルセル みなとみらい
聖シプリアン聖堂
London to Birminggham 1800年代 イギリス
伊豆高原ステンドグラス美術館
ダルドヴェール | 11 Dalle de Verre
他のステンドグラスとは一線を画すスタイル。分厚いガラスをエポキシ樹脂やセメントでつないでいる。見た目のインパクトは抜群で、一時期はブームになったりもしたようだが、分厚くて細かな細工ができないため、今は殆ど用いられない。公共の施設でごくたまに見る。 20世紀初頭のフランス発祥。
アーネスト・ジャン・ゴーダン カルロ・ロチェッラ 三浦啓子 ピッチングハンマー
霊南坂教会
霊南坂教会
名古屋市営地下鉄名城線・栄駅
名古屋市営地下鉄名城線・栄駅
ノンスタイル | 12 Non style
新進気鋭の作家の作品から、箸にも棒にも掛からない陳腐なステンドグラスまで様々。これといったスタイルではないだけに、クオリティーの差が激しい。
上の11種類に当てはまらないものは、便宜上全てここ。一般人(まあ作家や職人もだが)が何も考えず作るとだいたいここになる。
幾つかの様式が混じり合ったスタイルとも言える。後に一つの様式として定着するものも、ここから出てくる。
テオ・ファン・ドゥースブルフ(デ・ステイル)など、上に挙げなかった、様式と呼ぶには細かすぎるものも、ここに分類する。
工芸 素人
東京メトロ銀座駅
鳩山会館
大阪市中央公会堂
飯田橋RAMLA【ラムラ】
普段は特に様式など気にせず鑑賞するが、こうやって独自に分類してみると、歴史的な背景なども感じることができ、面白いものである。
制作側としては、コントクストとして何らかの様式を意識的に取り入れていくと、作品に深みが出るかもしれない。機会があれば試してみたいと思う。
以上
はじめまして
最近ダルドヴェールという技法を知り興味を持ち始め、
いろいろ検索してみました。
ロクレールという技法も見つけましたが、ダルドヴェール
とロクレールの違いがわかりません。
エポキシ樹脂と珪砂の割合が違うのでしょうか。