ヤカゲニーのスティップルだけを使ったステンドグラス 01

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ヤカゲニーのスティップル

Youghiogheny(ヤカゲニー)は、アメリカペンシルベニア州のコネルズビルという都市にあるガラスメーカー。正式名称は、Youghiogheny Opalescent Glass Co。


アメリカインディアンであるヤカゲニー族の名を冠したガラスメーカーであり、マークもインディアンの横顔になっている。

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今回の主役であるスティップル以外にも、リングモトルが多用されるガラス、ティファニーランプ用の復刻ガラスが有名で、最近ではY96というフュージング用の製造ラインも設けられている。


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ヤカゲニー川のほとりにある工場では、オセアナやウロボロスの復刻版も作られている。


数年前の公害問題や後継者不足で元気のない印象があるアメリカのガラスメーカーの中にあって、活気のあるメーカーという印象が強い。


ヤカゲニー社の製造ガラス・ラインナップは以下の通り。


型番(シリーズ) 名前 説明
SP スティップル
Stipple Glass
半透明のザラザラとしたガラスで、雪を踏み固めたような、他に似たものがない独特なテクスチャをもつ。元々はティファニー・スタジオが作ったものを、ヤカゲニー社が再現した。
HS ハイストライク
HIGH STRIKE VIRTUOSO PRODUCTION ART GLASS
リングモトル柄のガラス。
RG Tiffany Reproduction Glass ティファニーが作ったガラスの復刻ガラス。ただ実際にはティファニーの品質には遠く及ばない。
TD トゥルーダイクロ
TRUE DICHRO
最近できた高級ラインで、反射光と透過光で激しく見え方が異なるランプ用ガラス。色柄の変化が、シート内・シート間共に激しい。2020年現在、日本では入手困難か。
Oceana オセアナ
Oceana Glass
オセアナ社が廃業した後に、看板を引き継いで生産しているモデル。残念ながら昔のオセアナには及ばないと言われている。
Y96 Y96 Fusible Glass 最近新しく始めた、フュージング可能なSystem96を踏襲したライン。良さそうな色が揃っているが、2020年現在、日本では入手困難か。勿論普通のステンドグラスとしても使える。
G TEXTURED STREAKIES グラニト・テクスチャで、ストリーキーになっている、恐らく一番新しいシリーズ。まだ色数は少ない。
- URO by YOUGH ウロボロスの復刻版。製造ラインを機器ごと引き継いで生産予定。2020現在、準備中。


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今回は、このヤカゲニーの、スティップルだけを用いてステンドグラスのパネルを制作する。


スティップルは透明のガラスの様に透け過ぎず、乳白色のガラスほど重くない、適度な光の透過度が大きな魅力で、とかく平面的になりがちなステンドグラスパネルにおいて、手前・奥の表現、つまり三次元的に見せるのに大きな役割を果たしてくれる。また、自然光でも人口光でもはっきりと発色してくれる。


●長所

・適度に光を透過する。アンティークガラスで言うところのオパックのような位置付け。

・1枚の板の中での表情が豊か → 一枚でいろんな箇所に使える。

・やや硬めではあるが、比較的切り易い(方だと思う)。

・安くはないが、そこまで高価ではない。


●短所

・柄が入っている板は、板によって、模様・色の差が激しいので、実物を見ないと買えない。柄がない板も、結構色味や透明度が違う。

・もわっと曇ったようなテイストなので、キレ=ガラス特有・最大の魅力であるキラキラ感はほとんどない。

・ややもろい(割れ易い)。


以下は、同じ型番の板で色・模様が違う例(5409SP)。


ちなみに、フュージングや絵付けを想定しているガラスではない。やってみて、たまたま焼けるガラスもあるが、焼けないのもある。どうしても焼きたいなら事前のテストは必須だ。


実際に試してみた結果、スティップルの中でも、乳白色(濁った感じ)があるガラス・ないガラスがあるが、乳白色が少しでも入っていると、焼成によりそれが強まってしまう模様。狙って良い感じに不透明さを上げることができるかもしれないが、大抵の場合は、何の役にも立たないガラスになってしまうだろう。


以下は600℃での焼成テストの結果。絵付けの温度でこの結果なので、フュージングの温度帯である800℃レベルだと失透・変色が著しいのだろうと想像できる(試してはいない)。


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焼成前。


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焼成後。左下の緑のガラスが、大きく変色・白濁しているのが分かる。


ガラス紹介

今回使用予定のスティップルがこちら。


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1000SP 和紙の様な氷菓子の様なテイスト。一番有名で人気のあるやつ。


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1002SP 白にアンバー。建物の壁とかに使えそう。


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700SP 単色のグレー ありそうでない良い感じに半透明なグレー。


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NeodymiumSP ネオジムという特殊な元素が入った白。やや紫がかった白色。


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1717SP 禍々しいダークな色だが、強い光を当てると茶色っぽくもなる。限定カラーらしい。


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1302SP 茶色とアンバーの妙。木とか枝にぴったりと思いきや、意外と薄い。


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6314SP みずみずしい青と、紫、緑も少し。海の色にぴったりかと。


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1660SP 白に青。空とか雲に使えそう。


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3603SP やや暗めだが、結構綺麗。明るい色の引き立て役に使えそう。


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3610SP 紫と青が混ざったような混ざってないような色のガラス。遠くの山とか、日が沈んだ直後の空の様な。


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6600SP 単色の水色。ポップで軽い感じの色。


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4500SP 単色の黄緑。他の緑と比べて地味で深みがない感じだが、使いようはある。


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4566SP 植物っぽいガラス。黄から緑のグラデーションなので、使い勝手よさそう。


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4504SP  綺麗な緑と黄緑のガラス。ムラ具合もGOOD。


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5642SP そのまま飾っておきたいくらいな綺麗な板。でもステンドグラスで使うのは簡単じゃなさそう。


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5409SP 朱色~アンバー~緑。いろんな色がとれて使い勝手良さそう。板によって全然色が違う。


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1109SP 明るい赤。乳白強め。


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1000SP Ripple 1000SPに派手なリップルのテクスチャが入ったもの。


ちなみに、ヤカゲニーのガラスは、スティップルのみならず多くのガラスに3~4桁の番号が付けられており、それぞれの数字には以下の色が割り当てられている(ガラス屋さんに伺った)。


1.white ホワイト

2.umber アンバー

3.purple パープル

4.green グリーン

5.yellow イエロー

6.blue ブルー

7.pink ピンク

8.none 割当なし

9.red レッド


(例) 上のガラスの場合、白:1と赤:9が入っているスティップル→1109SP

デザイン・設計

今回は、お客様から山(マッターホルン)と城(ノイシュバンシュタイン城)、というお題を頂いた。サイズは、W1500×H500。


設置場所は室内で、自然光ではなくバックライト(蛍光灯)の光が入るとの事なので、スティップルは素材として丁度良い。


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マッターホルン


アルプス山脈、スイスとイタリアの国境にそびえる霊峰。標高4,478m。


長い間、登頂を拒み続けた山として有名で、初めて登頂されたのは1865年。イギリスの登山家、エドワード・ウィンパーの7回目の挑戦で何とか達成された。


その北壁は、アイガー、グランド・ジョラスと共に、世界三大北壁の一つに数えられる。


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ノイシュヴァンシュタイン城


ドイツにある、ルートヴィヒ2世が建てたお城。


建築途中で王が亡くなったため未完成であるが、現在はロマンティック街道の終点として、人気の観光スポットとなっている。


「おとぎ話に出てくるような美しさ」と讃えられるこの城は、ディズニーランドのお城のモデルの一つとして知られている。


モチーフについて調べて、参考写真を何枚か用意。実際にはこの山と城は別々の場所にあるため一緒に見ることはできないが、今回は横長の矩形の左右に無理矢理配置することとする。


そして...、できたデザインがこちら。




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山はともかく、城はステンドグラスにするには難しいモチーフだ。ある程度細部を描かなければ、城っぽくならない。最低限のピースで城という幾何学的で複雑な造形を表現するのは難しい。


予算が倍あれば、ピース数を増やして多少絵付けなんかを施せば、もっと城っぽくなるだろうとは思う。

風景などの写実的なものをステンドグラス化する場合、自分が思うポイントは以下のようなもの。


できるだけ違和感のない、自然な線

細部まで全てを表現することは無理なので省略したり、カットできて割れ辛い形のピースにする必要がある。


その際に、単純化し過ぎたり、無理矢理直線や定規で書いたような曲線を入れるのは基本無し。実在しない線を入れるにしても、コツがある。


例えば、湖は何らかの方法で分割する必要がある→景色を湖に映して、あとはまあ地上なので水平な線で自然に区切る、という感じに考えた。


空は、湖が水平だからそれと差を出すために...垂直だと不自然なので斜めに、という具合。


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粗密のバランス。

ステンドグラスは構造上、どうしても黒い太い線で囲まれてしまう。その囲まれたピースが同じような大きさだと、退屈に感じてしまう。


省略するところは思い切って省略し、誇張するところは大胆に嘘をついていく。


城はどうやっても密になる。山も主役なので山頂付近は密に。湖と空は粗く(大きなピースに)する。あとはバランスをっとってできるだけ自然に。

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構図

言葉で説明するのが難しいが、良い感じの構図。Illustratorでひたすらシミュレーション。拡大・縮小・移動が楽で助かる。裏返すのも忘れずに。


今回の場合は、横長で左右に山と城を配置すると真ん中の間が持たないので、中央に有明の月を配置した。


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主役を明確に

主役である山と城に目線が定まりやすいように。どこを見て良いか分からないようなのは、×。


ノイズをなくして見やすい、見ていて疲れない絵を心がける。

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小川三知は、作品によってクオリティーの差があるが、今回大いに参考になった。有機的で自然な線を引くのが抜群に上手い。


今回はここまでで。

次回、制作編。



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