東京の上野にあるこの建物、「国立」と冠するだけあり、かなり大きくて立派な建物である。
ここの本館の中央階段付近に、繊細で軽やかでありながら重厚さも併せもち、かつ色っぽいという稀なステンドグラスが何枚か入っている。
東京都台東区の上野恩賜公園内にある、日本最古の博物館。1872年(明治5年)に創設された。
上の写真は「本館」で、それ以外にも幾つか建物がある。収蔵品は10万件以上と、これまた桁違い。
世間一般ではそんなに注目されていないが、ここの本館の中央階段付近に巨大なステンドグラスが何枚か入っている。
中央階段を上がって左側の踊り場に、まず1枚。
ガラスは、バックが全てサンゴバンのCXで、絵柄の箇所はココモのオパレッセントか何かだと思われる。
そして右側にも同じものが。階段の下にも少し小さいものがある。
遠くから見ると、中央の柄はまるで絵付けされたよう(でも違う)。
階段下のもの。目の高さで鑑賞できる。
アールヌーボー調の落ち着いたデザインは、建物の雰囲気に良く合っている。
オパールセントグラス(乳白色の混ざった、透明度の低いガラス)の箇所は、テクスチャ・透け感・色使いが複雑に組み合わさっており、十分に深みが出ている。そしてそれとCXの対比がまた素晴らしい。
全体が、自然界にも普通にあるような枯れ木や琥珀を思わせるナチュラルカラーで統一されている。そして、色数が少なく統一感がある。渋い。
ランプの彫金やエッチング模様とステンドの柄には、共通点がある。
日が落ちれば、また違った表情を見せてくれる。
CXの使い方が史上最高だ。
他にも何点か。
建物自体が重要文化財なので、その中央大階段にあるステンドにはそれ相応のものが求められる。今回のこのステンドは、その役割を十分に果たしている。
デザインはシンメトリーを基調としながらも、ガラスは必ずしも左右対称ではなくランダムになっており、理想的な亜シンメトリーだ。適度なアンバランスさが絶妙のバランスを保っている。
そして、ゆったりとしたバックに対してモチーフをギュッと中央に寄せているため、粗密感がしっかり出ている。要するにきっちりメリハリが効いているのだ。
CXの落ち着いた淡い色・テクスチャも渋くて格好良く、それと同系色で上手くまとめたオパールセントグラスの唐草模様も素晴らしい。ガラス使いが最高なのだ。
モチーフは、唐草模様のような鳥のような・・・はっきりさせず、何なのか良く分からないのがまた良い。人は、得体の知れないものに惹かれる傾向がある。そして勝手にイメージを働かせる。
あと、今回のは、マス目毎に区切られたステンドを金物を介して繋ぎ合わせているが、マス目の十字の部分の装飾が肝であり要だ。これにより繊細さと高貴な感じがグッと高まり、そんじょそこらのステンドとは一線を画すことが出来ています。
デザインした作者や制作工房は不明だが、超一流プロフェッショナルの仕事なのは間違いのないところである。
技術的にも、ケイムの線が、線の綺麗さ・左右対称性においてほぼ完璧である。線が良いから、色(ガラス)が左右非対称なのとのギャップが生きる。線が雑でガラスもバラバラだと、ただの適当に作ったモノになってしまうので。
国内屈指のステンドグラスではあるのだが、何だか粗末に扱われてるのがちょっと残念なところ。勿論この建物の主役ではないのだが、名脇役として頑張ってくれているので、ホコリやガラスの割れがあるのはとても残念。割れの補修やホコリの除去などを施た上で、もっと丁寧に扱われれば、もう少しだけ輝けるに違いない。
このステンドグラスは、昔の作品と言うこともあるが、決して高級なガラスは使っていない。マシンメイドの安いものだけなのだ。それでも高級感がある。ステンドは、ガラスではなくガラスの組み合わせであり、線であり、デザインなのだな、と再認識できた。
この日はステンドグラス目的で言ったので他の展示物はゆっくり見られなかったが、ここは博物館自体が本当に凄い。展示物の量もレベルも半端ないので、また今度ゆっくり見に行きたと思っている。
2年以上前に、投稿したものです。
投稿したことを、すっかり忘れていました。
祖父は東京大空襲で岡山に疎開して、私の父が学生の頃に亡くなりました。
叔母が言うには、祖父は小川スタジオで修行してから独立したそうです。
神田明神の裏あたりに、工房兼住居があったそうですが、空襲で焼けたようです。
とても素敵なステンドグラスで、私の誇りです。
突然、すみません。こちらのステンドグラス、私の祖父が作成したと、叔母から聞いてます。
昨年末、99歳で亡くなった叔母が制作過程を見ていたそうです。
祖父は神田の工房で作りました。