10年前の自分に受けさせたいステンドグラス講義

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ステンドグラスとは

ガラスを鉛の線でつなぎ合わせて作る建材・装飾品。


ガラスは透過するので、見る側と逆から光が当たっていないと綺麗に見えない。建物に入っているステンドグラスは、常に綺麗という訳ではなく、「光の具合と見る位置によって綺麗に見える瞬間がある」、と考えた方が良い。


「宝石」と「ガラス」。


この2つは似ているが、宝石は希少価値があるから、相対的に高価なだけであって、綺麗だから高価な訳ではない。絶対的な美しさは、ガラスの方が上。色・透明度・テクスチャが様々で加工も容易なので、幅の広い魅力を持っている。


ガラスという素材に特別な魅力があって、ステンドグラスはそんなガラスの組み合わせで魅せる。その魅力を最大限に生かしたステンドグラスが、価値の高いステンドグラス。

ケイムで組んで建物に入れる

<ステンドグラスの種類>

ケイム技法(ヨーロッパ方式)

コパー技法(アメリカ方式)

その他(ダルドヴェールなど)


ケイムで組んで建物に入れるステンドグラスの事だけを考えていれば良い。コパーテープを貼ってハンダで繋げたテーブルランプなどもあるし、稀にその技法で作ったものを建物にいれることもある。ただ、基本はケイムのパネルだ。これがステンドグラスだと思えば良い。それ以外は脇役である。


まあ、趣味でやるだけ、とか、逆にティファニーを超えるつもり、と言うのなら話は別だけど。そっちの方向(コパー技法)に行っても、あまり何もないと思う。


光の移り変わりによって変化する大きなステンドグラスが間違いなく綺麗なのは、ちまたにあるステンドグラスを見て回ればすぐに分かると思う。建物に入ったステンドグラスこそがステンドグラスだと思えるはず。大きいことに大きな意味がある。


大きなステンドグラスを一人で作って建物に入れるのは、建築の知識も必要そうで敷居が高く思えるけど、実際やってみれば何とかなる。ダメなら取付だけでも人に頼めば良い。

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実物を見て回る

建物に入れるステンドグラスはある程度の大きさがあるので、おいそれと作ることができない。実験があまりできない。


だから建物に入っているステンドグラスを見て回って学ぶ必要がある。ガラスの感じは写真には上手く映らないので、実物を見て感じ取るしかない。良いステンドグラスを見ると、そこで見ることでしか味わえない、言葉にできないような感覚があったりする。


見て回って思ったことが、その後に作るステンドグラスに大きく影響する。浴びるように見よう。

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ブルーオーシャン

大昔に作られたステンドグラスがずっと評価されていて、それに代わるものが出てこない。

古くからステンドグラスを作っている人は徐々に辞めていき、新しく始める人の数も減っている。

有名な作家もほとんどいないし、まじめにやっている人が少ない。ステンドグラスを作る人は、仕事にしている人より趣味でやっている人が圧倒的に多く。プロと趣味人の差があまりない。


だからチャンスだと言える。


一般的に、仕事でやる以上は安定的な収入が必要なので、ステンドグラス自体のクオリティだけに集中することは難しい。凝ったステンドグラスは見積が高くなってしまい顧客に断られがちだし、コストを下げるために作業時間を減らしてクオリティを下げる場面も出てくる。だから実際、クオリティの高いステンドグラスはあまり作られない。


仕事にしてしまうと、はじめはステンドグラスが好きだった人も、徐々にそれが薄れていってしまう。特に雇われて大きなステンドグラスを作っていたり、いつも同じようなステンドグラスだけを作っていたり、一部の工程だけを専属でやるようになってしまうと、意欲は失せてしまうことがほとんど。潰しが効く仕事ではないので、その場所で腐っていきがち。


未来のことはわからない。ステンドグラスは鉛を使うが、鉛は人体にとって有害。規制されてステンドグラスが作れなくなるかもしれない。逆に、突如ステンドグラスブームがくるかもしれない。円安でガラスも仕入れづらいし、色々と逆風が吹きまくっている。


だからこそ、逆にチャンスなのである。

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ガラスを良く知る

ステンドグラスはガラスの組み合わせがキモである。だからガラス(板ガラス)のことを良く知っておく必要がある。


色味 - 深い色・ポップな色

透明度 - 半透明・不透明

テクスチャ - ツルツル・デコボコ

製造方法 - アンティーク・マシンメイド

テイスト - 高級・安っぽい


板ガラスをそのまま使うのがメインだが、加工するのも有効である。

絵付け

フュージング

サンドブラスト

面取り・切子


既存の板ガラスメーカーはどんなガラスを作っているのか。自分でガラスから作るとしたらどんなものが作れるのか。ガラスを良く知った上で、ガラスを加工する技法を一通りやってみよう。

デザインがすべて

ステンドグラスのデザイン=ケイムの線とガラス。


ケイムで組む時の技法や強度も大事だが、そのステンドグラスが「ぱっと見」で良いかどうかが全てである。ステンドグラスは兎に角デザインが全てだと思えば良い。これを磨くのみ。もしくは優秀なデザイナーを探そう。


あと、Illustratorは必須。きちんと覚えて使いこなそう。


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アイデアは模倣から

オリジナルにこだわることは大事だが、オリジナルの意味を取り違わないように。自分が良いと思えるデザインを上手く取り入れて、結果重視で進めていこう。


過去の偉人であっても、必ずもっと過去のものを真似た上でアレンジして自分のものにしている。


「模倣」は「連想ゲーム」のようなもの。


「模倣」と言うと真似、ズル、というイメージもあるが、その考え方をやめよう。人はまっさらな状態でこの世に生を受け、様々な刺激を受けて成長していく。仮に天才がいたとしても、その人間も過去に見たイメージを脳の中で再構築した上でアウトプットしているだけなので、結局誰かの何かを真似している訳である。天才が無意識に再構築したものも、凡人が意図的に取り込んで再構築したものも、本質的には同じである。


アイデアの源泉はどこから? 結局すべては模倣なのだ。


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技術は人から

ステンドグラスを制作する上での技術は、人から学ぼう。独学は効率が悪い。多くの工房で、そこ独自のノウハウがあって、それは自分では決して気付けないようなものがほとんど。文書化もされていないことが多い。道具もそうだし、パテやフラックスなども各工房・各職人で独特なことが多い。沢山の工房に関わり、すべてを知った上で自分に合うやり方を選択していくのが一番良い。逆に、ずっと特定の人・流派にだけ師事したり属するのは極力やめよう。


どこかの工房の特定の個人だけが知っている道具・やり方が、その後自分がずっと使い続ける大事なものになることが多い。


ただ、先輩の話を無条件に鵜呑みにするのは良くない。あくまで、それを踏まえた上で自分で判断しよう。

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興味を持続させる

どこかでステンドグラスを見て、それに感動してステンドグラス制作をはじめました!って人は多いが、その時のやる気・モチベーションを維持してずっと続けている人に会ったことがない。ステンドグラスに限らないが、人はその瞬間の興味を持続させるのは至難の業である。


他のことに興味を持ってそちらに流れていくことは悪い事ではない。ただ、ステンドグラスを作ることにバッチリ照準を定めているのであれば、その興味関心をどう持続するかが非常に大事。だから、高いレベルでモチベーションの維持・やる気の継続をさせる、自分なりの仕組みを考えよう。


何らかの鎖で自分を強制的に縛り付けるのも一つの手。時には狂気が必要なこともあるでしょう。あの手この手で自己を制御して、その上でコツコツと積み上げていくしかない。結果が出れば見える景色も変わり、それでまた前に進める。


その意味で、ステンドグラス教室を開くのは悪手。ノイズが混じるから。初心者の作るステンドグラスを日常的に見ていると目線が下がってしまい創作意欲が減衰する。あと、ハングリー精神が失せる。人数を集めてお金を取って人に教え続けることは、途中で辞めるのが難しく、それありきの日常風景になってしまう。多分それではダメ。


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ネットを最大限に活用

ホームページを作って作品を載せて、それを営業ツールにする。文章で情報発信をして注目を集める。ちまたにあるステンドグラスをネットで見て勉強することもできる。SNSもかなり使える。


ネットは打てる手がいくらでもある。それも低コストで。あり過ぎて混乱するくらい。


こちらが頑張って探すのではなく、あくまで見つけてもらう立場なのである。←これがとても重要なこと。コンセプトや世界観を大事にして、先ずは外面・見栄えを良くして、初見で弾かれないようにしよう。サイト自体を作品と思おう。


30年前のことを考えてみよう。たとえば自分の親の世代とか。今がいかに恵まれた時代かがわかる。あと、人に頼まず自分ですべてやるのなら、ITスキルを地道に磨いていこう。


お金儲けは控え目に

きっとお金が足らなくなるだろうけど、それはそれで何とかしよう(※心身ともに健康であることが大前提)。何とかなるはずだから。仮に何とかならなくても・・・、まあ死ぬ訳じゃないんだし、深く考えるのはやめよう。


個人事業主なんて何やっても良いんだから、思考のタガを外してなんでもやってみれば良いんだよ。


ただ、お金儲けに注力し過ぎると、本来やるべきことが手薄になる可能性が高いので、バランス感覚を大事にしよう。理想は、お金はある程度あるけど、ステンドグラスを制作する意欲も失わない状態。


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10年前の自分

ステンドグラスの制作を始めたのは、2013年の6月頃。


本当に運良く、仕事として最初から大きなステンドグラスを作る機会があり、ケイムもコパーも両方実践で学ぶことができた。名古屋の街に飾る、大きなステンドグラスのクリスマスツリーを作った。


技術的には作れるようになったけれど、それ以外は何もない状態。もうしばらくは続けてみようと思っていたけど、それ以外は何も...。それがちょうど10年前の今頃の自分。


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世の中は常にうつろっていき、人間の想いは中々継続しない。だから、うっかり変な環境や習慣にハマってしまわぬよう、自分という人間をもう一人の自分で監視してコントロールし続けなければならない。


そんな中でいろんな人に出会って、その結果何処へたどり着くのか。10年後の自分も今と変わらず笑って過ごせていられれば良いなと思う。

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