吉祥寺と西荻窪の間くらいの場所にある、キリスト教系の女子大学。東京では、ある程度名の通った名門女子大として知られている。
礼拝堂のステンドグラスは、フランスのル・ランシーにあるノートルダム教会を模倣したものとされている。
以前、近くに住んでいたことがあったので、何度か前を通り掛かったことがあった。外から見るだけでも、何か雰囲気の良い建物が並んでいるのがわかったが、今回は中へ入ることができた。
これらの建物を設計したのは、アントニン・レーモンド(Antonin Raymond、1888-1976)というチェコ出身の建築家で、フランク・ロイド・ライトが帝国ホテルの建設で来日した際に、助手として一緒に来た人物。
女子大ということで、決して気軽には入れない訳だが、今回は学園祭ということで気持ち的にも躊躇することなく入ることができた。
礼拝堂の中へ足を踏み入れる。
42色のガラスが使われているのだそう。息をのむ美しさだ。
ガラス自体だけではなく、色ガラスの色が映ったレンガがまた美しい。
背面にある巨大なパイプオルガン。
時間帯によっては、反対側の壁にガラスの色が落ちる。
他にも何点か。
ル・ランシーのノートルダム教会を模したとされているが、ステンドグラス部分については、写真を見る限りは、決して単なるコピーではないのが分かる。
ル・ランシーの方は、枠で囲まれた一つ一つがステンドグラスの細かな模様(ケイム組み?)になっているように見えるが、女子大の礼拝堂は一つの枠で一色の一つのガラスである。それが、建物全体では42色の色ガラスが組み合わさり、構成されている。
ステンドグラス自体の意匠は、水平線・垂直線を基調とした上で、丸や三角、菱形をバランス良く配したシンプルなものと言える。その中で、大胆な線の強弱、細部の細かな線の変化が上手い。
また、通常のケイムで組んだステンドグラスではなく、コンクリートブロックで1ピース1ピースが囲まれた特殊な造りをしており、太い線(ブロック)の暗い部分が多い分、一層ガラスの明るい部分が強調され、強く輝いて見える。
この、影(コンクリート)とガラスの割合がこのステンドグラスの魅力に大きく関係しているのは、今回の最も大きな気付きかもしれない。影が大きいほど、光はより輝くということだ。
そういった要因や、色ガラスの色がブロックの側面や柱に映る現象が効果的に活き、ガラス自体の面積での粗密がなくとも、このステンドグラスを退屈ぜずに見ていられる、重厚で魅力的なものに仕上げている。
ガラスは、一見すると順序立って同系色で並んでいるように見えるが、良く見ると、紫の中に白があったり、白の中に緑があったりと、所々ランダムになっている。
そして柄は、一見すると単純な丸や四角が並んでいるだけの様で、実は細かい工夫がなされている。十字の個所は、一見するとただの十字のように見えるが、良く見ると、より手の込んだ意匠が組み込まれている。
普通の十字
一工夫ある十字
このような、パッと見では気付かない些細な工夫やこだわりが、潜在意識レベルで見る者の琴線に触れ、それが深い感動に繋がっているのではないだろうかと思う。
また、アントニン・レーモンドは、ライトの弟子であるだけあり、ライトの影響が微かに見て取れるのも面白いところだ。
強いて難点というか、もっとこうだったら、と思うのは、その規模。このステンドグラス、つまりこの建物がもう2まわりくらい大きかったら、その魅力は圧倒的なものになっていたのではないかと思う。この種のステンドグラスは、大きさ・規模自体が魅力の源泉であると思うのだ。
見に行く前は、本家であるフランス、ル・ランシーのノートルダム教会には及ばないのだろうと思っていたが、両者は別物なのだと認識を新たにした(本家の方は写真でしか見ていないが)。
下敷きにしたのは確かであろうが、模倣に終わらず、確かなオリジナリティーを感じた。それは、師匠であるフランク・ロイド・ライトのDNAであったり、レーモンド自身の個性が注がれた結果なのだろう。ル・ランシーのものよりも、余計な装飾を廃して、ガラスとコンクリートだけで荘厳なテイストを醸し出すことに、見事に成功している。
そして、ここのステンドグラスは抽象的な意匠であるが故、この場所に立つ一人一人が、自由に想いを馳せることができる。
気軽に見に行けるステンドグラスではないが、東京、いや、日本を代表するステンドグラスの一つであることは間違いないと思う。一年に一度の学園祭の日程を、今すぐスケジュール帳に書き込んでおいても損はないだろう。
新美の巨人の放送で知りました。
建物もですが,内部のステンドグラスも
素晴らしいですね。