シュライター 01【ステンドグラス・デザイン】

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ヨハネス・シュライター

ヨハネス・シュライター(Johannes Schreiter、1930~)は、ドイツ人のステンドグラス作家で、世界的に有名な人物。彼を現役No.1のステンドグラス作家と見なす人は、多く存在する。


ドイツ生まれで、1960年代の頃のニューグラスムーブメントの中心的な作家として、一躍名を知られるようになった。教会を中心に見ることができる彼の作品は、宗教的で哲学的、かつ、抽象的で神秘的でもある。その既存のステンドグラスの線や色とは一線を画すスタイルは、それ見ただけで、シュライター、もしくは彼の影響を受けてスタイルを真似た作家だと分かってしまう程。


...と、日本語で書かれた資料が皆無なので、人から聞いた話やWebなどの情報、想像力を働かせて、彼がどんな作家なのかを述べてみた。多少は間違っているかもしれない。


日本では、彼の造ったステンドグラスは、少なくとも公共の場では見ることができない。本やWebの写真で見る限り、彼の造るステンドグラスの具体的な特徴は、以下のようなところだ。


・水平・垂直の線、幾何学的な図形を基本とし、そこへフリーハンドで描いたような自由な曲線を組み合わせた、抽象的なもの。

・ガラスは、ランバーツのオパック系のものを使用している(ように見える)。

・線をわざと歪ませたり、普通のステンドグラスではあまり用いない、ガラスにケイムやハンダの線を乗せただけのラインを多用する。

・単純な線だけのステンドは作らず、敢えてトリッキーな線、敢えて崩したような線、を使う。ガラスも、普通にガラスカッターでは切れないような形のものを良く使う。それでいて、粗密や全体のバランスを強く意識している。

・ステンドのガラスに、哲学的なメッセージのようなもの?を、絵付けで描く。

・教会に設置するような、巨大なステンドをメインで制作している。

・基本的に宗教的、哲学的である。落ち着いた、深みのある色を使う。真面目系。


彼の制作するステンドグラスは、例えば以下のようなものだ。

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制作と言っても、恐らく彼はデザインを描くだけで、作るのは別の職人なのだろう。ドイツなどは、その辺りがかなり分業化されているらしい。


今回は、シュライターのステンドを観察し、その要素が入ったステンドを試作してみる。



デザイン

シュライターの作品を見ながら、何となくIllustratorでデザインを幾つか描いてみた。その中から手ごろなものを一つピックアップ。


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サイズは200mm×200mmで、20ピース。ある程度の大きさでないと本当のシュライターっぽさは出せないが、諸事情で小さくせざるを得ないのでこのサイズで。また、ガラスを区切るのではなく、ただケイムの面だけを乗せた線を用いているので、ピース数は少ない。


ケイムは、外枠がFH12とFH6、、中は、FH6、FH3を基本としつつ、右から左に掛かれたフリーハンドの線はFH4を使用する想定である。


普通はやらないようなガラスの形をしている箇所が幾つかあるので、ガラスカットには手間取るだろうが、ピース数が少ないのでたかが知れている。



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ガラスは、今の段階では具体的には決めきれないが、白をベースとして、赤と水色を使う予定である。



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抽象的な図柄なので、逆さまでも通用する。



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敷き紙と型紙の製図。ハートのラインが入っていない箇所は、ガラスの上にケイムを張り付けて使う。


線は、直線部分などは、敢えてもっと崩しても良いかもしれない。あとは、使うガラスでイメージがかなり変わってくるので、慎重に選びたいところだ。


制作では、ガラスカッターでカットできないようなピースは、手間を掛けてルーターで削るしかない。バンドソーがあればすぐにカットできるが、今は手元にないので使えない。ガラスが整ったら、あとは、20ピースをケイムで組んで、ケイムの面を張り付けるだけなので、そんなに手間取らないだろう。



次回、ガラス決め、ガラスカットの順で進めていく。



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