新しい電気炉
新しいと言っても、新品ではなく、30年近く大切に使われてきたもの。都内の引退された先生が使われていた電気炉を、ご縁があって引き継がせて頂くことになった。
この電気炉、調べたところ、過去にロンドンに拠点を置いていた「Laser Kilns(レーザー・キルンズ)」社のもので、現在は製造されていないもののようだ。
見た目は完全に業務用。ヒーターが付いている上蓋が開くのだが、この大きさ・バランスで上蓋がひっくり返らず安定しているのが不思議である。写真の棚板は、前に使っていた電気炉の350mm角のものをとりあえず置いている。
前に使っていた電気炉と比べてもかなりの大型で、このアトリエのキッチン部屋?の大部分を占めてしまっている。それでも電源は単相200Vで、特別なことをしなくてもほとんどの一般家庭で動かせる仕様になっている。
シルバーの筐体に取っ手だけ赤、というデザインも格好良くて、さすが日本やアメリカではなくヨーロッパのものだな、と思わせてくれる。
スペック表
| メーカー | LASER KILNS LTD.,(イギリス、ロンドン) |
|---|---|
| 外寸 | 縦840mm、横1200mm、高さ500mm |
| 内寸 | 縦520mm、横1010mm、高さ250mm ※電熱線含まず |
| 重量 | おそらく100kg以上(未計測)大人2人で持ち上げることは可能。運搬・設置には4人必要。 |
| 電源・電気容量・消費電力 | 単相200V 17.5A 3.5kW(銘板より) |
| 最高温度 | 1000℃(銘板より) |
| ヒーター部 | トップファイヤー方式、1.8mmカンタル線使用で、2系統パラレル接続(実測値22.5Ωのカンタル線×2=11.25Ω) |
| 制御ボックス |
制御ボックスの大きさ:縦336mm、横182mm、奥行246mm プログラムコントローラー:TC805(bentrup) プログラム9個、それぞれで最大9セグメント登録可能。LED表示 SSR(Crydom D2450)、電磁接触器(マグネットコンタクタ/Schiele)、ヒューズホルダー(GOULD MSC.10) |
| その他 |
K熱電対使用。 通気口3箇所。 安全インターロック回路(Guardmaster Ensign)・・・運転中、炉の蓋が開いた瞬間に、強制的にヒーターの電源を遮断。 |
電気炉裏側の銘板
制御ボックス
L型のアングルで組まれた台の上に固定されている。
配線・電気系統
この電気炉、「EC」マークが何か所にも貼ってあることからも分かるように、ヨーロッパの高い品質基準に基づいて設計・製造されているようで、質実剛健、かなり凝った作りになっている。この電気炉と同じものの情報が一切ネット上に出ておらず、プロコンのマニュアルも存在しないので色々と調べたが、使っているうちに忘れてしまうと思うので、今のうちに書き留めておこうと思う。
先ずはプラグの部分。見たことない形だが、単相200Vの2極とアースの1極の構成になっている。ツイスト式で抜け止め防止仕様。
制御ボックス外観。下の方の黒い線が電源からの線で、上のは制御ボックスから電気炉へ繋がる線。多芯コネクタになっている。
制御ボックスの中。カラフルな配線で分かり辛いが、要は右からプログラムコントローラー、SSR、安全装置で構成されている。
プログラムコントローラーの端子部。日本じゃ使われないようなパーツも使われている。
左から、ヒューズホルダー(GOULD MSC.10)、電磁接触器(マグネットコンタクタ/Schiele)、SSR(Crydom D2450)の順。安全への配慮が十分になされている感じ。
多芯コネクタへの接続部。1~10番まであるが、4番と5番で一つの出力、9番と10番で一つの出力になっていて、2つの出力が別で設けられている模様。
多芯コネクタ。ここの、電気炉の電熱線に繋がるであろう4番と5番、9番と10番の抵抗値をテスターで計測したところ、共に22.5Ωだった。
別々で2本あるので、おそらく並列で接続されているのだろうと思う。
並列であるなら、2つの合成抵抗は11.25Ωで、電流200V÷11.25Ω≒17.8A、消費電力約3.56kW。銘板の3.5kWとほぼ一致する。
電気炉の裏側、右がカバーを外したところ。これを見ただけでは100%断言できないが、多分並列だと思う。
それにしても、このセラミックチューブ(ANDERMAN製)がずらりと並んだ作りは、なんか凄い!
安全インターロック回路(Guardmaster Ensign)。電気炉の前面の取っ手はこの赤に合わせたのかな?細いのは熱電対の線。
ヒーター部。側面の真ん中の下に突き出ているのが熱電対。
配線とは関係ないが、上蓋の開閉を行っている、ガススプリング(ガスダンパー)。高圧の窒素ガスをシリンダーにいれて「空気のバネ」を作り出し、開閉を容易にしている。Made in Leicester England(英国レスター製)の刻印があり、産業用ガススプリングの老舗であるCamloc Motion Control社の超高品質なダンパーが採用されている。
この電気炉はいくらで売られていたかわからないが、全体的に良いパーツを使いすぎて採算が合わなかったのかな?とか想像してしまうくらい、良い部品が使われている気がする。
プログラムコントローラー操作方法
過去に、日本製の電気炉やパラゴンの電気炉を操作したことがあるが、意外なことに操作方式は日本のものに近い。
制御ボックスの左下にあるスイッチを入れると、「V4.7」という内部ソフトウェアのバージョンが表示され、その後、上部ディスプレイに炉内温度が表示される。
表示窓は、上が温度や時間、左がセグメント(segment)No.、右がプログラム(program)No.である。セグメントは、プログラム内の設定温度と到達時間を1つずつグループにしたもの。最大で9つ設定できる。
[prog]ボタンでプログラムを選ぶ。1度の焼成で、1つのプログラムが実行される。1~9まであり、それぞれに保存しておくことができる
この画面では、プログラム5の3番目のセグメントの設定温度が表示されている。
プログラム5の3番目のセグメントの到達時間。この画面では、SKIPと表示されているが、これは、「可能な限り早く(電気炉のフルパワーで)」という意味。
左右の矢印で、次の設定に行ったり戻ったりできる。上下の矢印は、値の設定で使う。
同じプログラム5の、次のセグメント。設定温度は前のセグメントと同じ800℃。
この画面表示は到達時間が30分と言う意味。時間の場合は「2:00h」のような表示になる。
到達温度のところで「End」を選ぶと、そこでプログラムは終了となる。
操作方法をまとめると、[prog]で1~9の番号を選んで、上下で値の設定、左右で次へ/戻るというだけ。とても簡単。一度設定した値は自動的に保存される。
あとは、startボタンを押すだけである。
テスト焼成
暑い日が続くので、未実施...。一応、300度まで30分程度で上がるのを確認済み。
これから
ちょうど1年くらい前に、既存の200Vがもうダメっぽいので、100V仕様の電気炉を導入した話を書いた。それから1年、本当に良いタイミングでこのlaserを使わせてもらうことになり、幸運だった。これがなければ、今頃自作していたかもしれない(それはそれで面白いが...)。
200Vの電気炉は、ただ使えるものを作るのはそんなに難しくはないが、きちんとした満足できるものを作るのは、素人には不可能に近いなと痛感した。このlaserは、制御ボックスはさておき、筐体自体や開閉の機構、コネクタ周りや電熱線の取り回しが秀逸で、絶対に真似できないレベルに仕上がっている(パーツがヨーロッパのものというのも大きいかもしれない)。
つくづく、人生は運だなと思う。今回の件も、先生とは面識がなく、その生徒さんの知り合いの方と自分が3年位前に一度だけご挨拶したことがある、という接点があっただけだった。
ともかく、電気炉を自作しようとしていただけあって、知識は十分に備わっているはず!?で、壊れても直せると思うので、一生大事に使っていきたいと思う。













