経緯・構想
新しくお家を建築中のH様。その一部にステンドグラスを入れることを検討されているとのこと。建築士様経由でお問い合わせを頂いた。
1階から2階へと上がる螺旋階段の上下に2箇所、小さめの光とりにステンドグラスをというお話だ。
2階 開口のサイズは、約W216mm×H270mm。
1階 開口のサイズは、約W134mm×H185mm。
開口の周りの素材は、木の上に珪藻土のようなものが塗られれいる。
ご要望として、
●暖色系のガラスを使用し、下から上にかけて色が薄くなるようなテイスト
●やや不規則にレンガを積んだような柄(既存のダルドヴェール風ステンドグラスの参考写真あり)
●ガラスの形は長方形を基本とし、所々に丸が入る
というお話を頂いた。
デザイン・設計
対面でのお打合せやメールでの意見交換を経て、最終的に決まったデザインは以下のようなもの。作り方は、ケイムではなくコパーを使うことで、線にやや不規則さを取り入れている。
四角の部分は普通の板ガラスを使うのだが、丸の部分はただの丸く切ったガラスではなく、立体感のあるものにしたい。
その場合の選択肢としては、以下の様な既存のナギット・ジュエルがあるが...
ただ、こういった既製品のナギットやジュエルは、面白みのない工業製品のようであったり、色や大きさに制限があったりしてしまう。
そこで今回は、ひと手間かけることにする。
使用ガラス
暖色系ということで、赤、アンバー、クリア系のガラスを用意。できるだけ暗くならずに明るめの色でテクスチャ強めのもをチョイス。
フュージングパーツ作り
以前にご紹介した通り、アトリエに電気窯を導入したので、これでナギットを作る。窯の初仕事だ。
...初めてなので、何から何まで試行錯誤だった。途中は省いて、結果と要点だけを簡潔に記しておく。
フュージングに耐えうるガラスは決まっているので、前述のガラスの中から、ブルズアイ、ウロボロス、モレッティのみを使用した。ちなみに、ココモも一応試したが、失透がはなはだしく、全く使えなかった...。
上の焼成グラフ(パターン)の場合の設定方法を記す。各ステップの設定値と説明は以下の通り。
STP | 設定温度 | 設定時間 | コメント |
---|---|---|---|
1 | 800℃ | 0:01 | 常温から800℃まで可能な限り早く上げる。 |
2 | 800℃ | 0:30 | 800℃を30分キープしてガラスの溶けを促進。 |
3 | 482℃ | 0:01 | 482℃まで可能な限り早く温度を下げる。 |
4 | 482℃ | 0:30 | 482℃を30分キープ。アニールソーク。 |
5 | ---- | なし | 運転を停止し、自然冷却。 |
色んなパターンで試したが、ブルザイやウロボロスはこれくらいの温度が良さそうな模様。モレッティーは最高温度を760~780℃くらいにしないと、失透してしまう。
ウロボロスのガラスはフュージング用ではないが、ブルズアイに並んで発色が良く綺麗に仕上がった。他の非フュージング用のガラスも試したが、殆どがダメだった。
パーツが小さいので、急な温度の上下でもガラスが割れることは全くない。
棚板にセラフォームというフュージング用の紙を敷いて焼いている。ファイバーペーパーも試したが、繊維がガラスに食い込んで仕上がりが綺麗ではないので、今回は使わなかった。と言うか、今後もう一切ファイバーペーパーは使わないかもしれない。
裏面を失敗した場合、表面をルーターで削り、上下逆さまにして再度焼くと、完全に復活する。当然だが、削らなければ、表面は汚いままに仕上がる。ルーターで削ると跡が残ると良く言われるが、経験上100個に1個もそうはならない。綺麗に仕上がる。
こんな感じでガラスを細かく切って重ねて焼くと・・・
表面張力が働き、こんな感じで厚さ6mmの綺麗な円形になって仕上がる。
左の2個がファイバーペーパー、右の2個がセラフォームを敷いて焼いたもの。セラフォームを使うと、ツルツルというか、サラサラした感じに仕上がる。ファイバーペーパーを敷いた方は、ザラザラしてファイバーペーパーの繊維が付着してしまっている。
綺麗な深みのある仕上がりの物は、ほとんどがウロボロスのガラスから作ったもの。元のガラスが良くないと、フュージングの作用だけではこうはならない。
気泡入りのガラス。気泡を出すだけでなく、上手く中に泡を閉じ込める必要がある。気泡の大きさと配置も、もちろん大事。
色ガラスとナギットをデザイン画に当てはめてみて、仕上がりをシミュレーション。
パーツができたので、次回、パネルの制作に入っていく。
以前まるめちゃっとのあるからな。
万華鏡に使ってみようかな。