前回の続き。デザインは決まっているので、今回はガラスカット~完成までを。
ガラス選び、カット
サイズは、W492mm・H1032mmで、65ピース。
ケイムは、中がFH5hで、外はFH12hを使用。
パッと見は分からないが、中心を起点として、上下点対称(ぐるっと180度回転)のデザインになっている。
上のデザイン画で既に当てはめ済みだが、使ったのは以下のガラス。
ガラスカット完了。
並べてみる。
組み・ハンダ
いつも通り、印刷した紙を繋ぎ合わせた下紙の上で、組んでいく。
最近手に入れた直角定規。新潟精機の曲尺(かねじゃく)。厚みがあってしっかりしており、触れただけで上質だとわかるもの。これから長く愛用していきたい。
こちらも最近手に入れた、ケイムナイフ。あまり見たことのない形をしているが、形状からしてステンドグラス専用のものだろう。
組みが完了。
全面ハンダまで完了。
パテ・仕上げ
今回は、ガラスを完全にガムテープでマスキングして、パテ入れを行った。直線だけのデザインなので、そこまで手間は掛からない。
目的は、硫酸銅で腐食するときにガラスへの付着を最小限に抑えるため。結果的にパテがガラスに付着しないので、クリーニングが楽になる。
そして今回は、パテ入れ後に焼石膏(しょうせっこう)をまぶしてみた。全体にふりかけて、馬毛ブラシで広げる。粉がパテの油を吸い、乾きが早くなるという目論見。できるだけ、制作する毎に何らかの新しい試みを取り入れたいと思っている。
焼石膏は、硫酸カルシウムが主成分。同じようなものに、炭酸カルシウムや炭酸マグネシウムを主成分とした、ステンドグラス専用の「ホワイティング」がある。どちらが効果的なのだろうか。機会があったら試してみたい。
パテ入れから1週間。ある程度乾いたので、粉を除去してパテ切りし、ケイムを真鍮ブラシで磨いて、硫酸銅で腐食。
硫酸銅を洗い流してガムテープを取り、サッとクリーニングして、アトリエの窓に立てかけてみる。
あいにく外が曇っているが、自然光ではこんな感じに。取り付くのは屋内なので、この見え方はこの時だけのもの。
取り付け・完成
取り付け完了。今回は、四方を押縁で抑えるオーソドックスなスタイル。
部屋の外から。
光の具合がとても良い。
階段の途中から。
部屋の隅々まで神経の行き届いた、ハイセンスな空間。壁の塗り具合から、照明のスイッチ、ドアノブ、インテリアに至るまで、一般的な日本の住宅と比べて、明らかな違いを感じる。
そこへ、作らせて頂いたステンドグラスが。線が水平垂直のみだと、周りと喧嘩しない。スッと吸い込まれるように調和してくれる。手前味噌で大変恐縮だが、パズルの最後の1ピースが入った感覚さえある。
当たり前のことだが、つい忘れてしまう、ステンドグラスは建物の一部だということを。改めて実感した。
ステンドグラスが家を、家がステンドグラスを、それぞれ引き立たせるような、理想的な結果になった。
新築マンションに越しますが、4.5畳の書斎と12畳のLDKを隔てる壁の上部に、縦0.575m横1.78mの横長のガラスが、8mm幅の押え木枠で嵌め込まれたデザインが気に入りません。ここにドゥースブルグ原典のこのステンドグラスを、可能なら導入できないかと考えてしまいました。別の発注者のデザイン、しかも縦のものを横にしようというのですから、不遜な希望かとも心配しています。価格レベルについても、正直霧の中という感じです。可能性の有無についてご教示頂ければ幸いです。