製図
前回までで、完成イメージとサイズ感が固まっているので、今回はその続き。先ずは製図から。
ガラスの形は5種類しかないので、型紙が少なくて済む。5種類だけだ。下紙には補助線を引いて、組む時の手助けになるようにしている。
手作りなので多少のズレや歪みはつきものだが、可能な限り精密に組めるように下準備から注意を払う。特に、今回のような幾何学的な図柄の場合はとても大事なこと。
ガラス選び
実物のモデルに近い色で、手持ちのガラスから適当なものをピックアップする。
重くなり過ぎないように、クリア系か半透明のオパック、スティップルを使用した。不透明度が強いオパレッセント系は使っていない。
黄色・アンバー系と赤の中間であるオレンジ系の色があると、全体のコントラストが弱まって良い感じになる気がした。ただ、オレンジの良い感じのガラスが手持ちになく、そもそもそんなガラスはあまり見たこともないなと思った。
ガラスカット・研磨、ケイム準備
型紙を作ってガラスに罫書き、ガラスカットを進めていく。
今回はガラスが特殊な形なので、ガラスカッターだけではカットできない。段差のところはルータで根気よく削っていく。
直角の段差の箇所は、ルーターの細いビット(1/8インチ)で削っていくのだが、これが中々の手間。ケイムの「隠れ」を最大限に利用するならば、通常のビット(1/4インチ)でも何とかならないこともない。
ガラスを切りながら、並び順を決めていく。結果、今回はこの並びに決定。
今回は内側の4mmケイムの形は3種類しかない。事前に用意しておくと効率が良い。FH4sは柔らかいので、曲げるとこのように内側がビラビラにめくれ上がってしまうのが難点。
ケイムの端は5mm程度芯を抜いておく。今回はケイムの端まで隠れず剥き出しなので、組んだ後にコンマ1ミリ単位で綺麗に切り揃え、縦のラインを通す必要があるからだ。
内側のケイムは正円の一部である。そのため、円柱の筒に巻いて形を作るのだが、円の直径にあった適切な筒を用意することがとても大事である。
今回は、ケイムの内側の直径が27.7mmなのに対して、24mmの筒を使用した。そのため、筒で曲げた円を手で綺麗に整形する必要があり、手間と歪みが生じた。
組み・ハンダ
端から順に組んでいく。
半分ほど組み終えたところ。ガラスのカット・研磨が正確ならば、ガラスとケイムを交互に差し込んでいくだけなので、時間はそんなに掛からない。
組が終わり、ラインを丁寧に揃えて点ハンダに入ったところ。
縦のラインを綺麗に出すことが兎に角大事。敷き紙に照らし合わせながら、ケイムの端の長さ・形を微調整し、縦に4mmの幅になるようにする。
表裏の点ハンダが終わったら、全面ハンダを施していく。
全面ハンダ完了。テクニカルな工程はこれで終了だ。
パテ・仕上げ
パテ入れが終わり、表面に付いたパテをできる限り綺麗にしたところ。いつも通り、松煙で黒くした白パテを湯煎した上でベンジンで柔らかくして、入れてある。
パテを10日程放置して乾かした後、ケイムを硫酸銅で腐食させ、水洗い。
硫酸銅は今回も適当な濃度で、恐らく10~15%位。銅色の赤み掛かったテイストを少し残しつつ、グレーに成り過ぎない、かなり良い感じに染まった。ムラ加減も悪くない。
この後、パテ切りを行い、ガラスを磨き上げ、完成。
完成
裏側から。
振り返り
ガラスとタイルの違いからか、モデルとは感じが違う風になった。モデルはタイルの間が白で、ステンドはケイムの黒なので、まあそれは仕方ないと思う。そんな中、肝心のラインは問題なく再現できた。ただ、ガラスの色合いはちょっと派手過ぎたかもしれない。ガラス使いにもっと工夫があれば、もっと良い感じが出せたと思う。
ケイムの端が縦のラインを構成するため、ケイムを正確に切る必要があるが、組む際に完璧に切り揃えなくても、ケイムの芯を抜いて端の長さに少しだけ余裕を持たせておけば、組んだ後に切り揃えることができる。今回はそのやり方で行った。
と言うか、そのやり方でなければ綺麗に線幅と形を整えることは不可能だろう。この、組んだ後にケイムの細部を切って調整、というやり方は、今回の小さな発見・収穫だ。
今回はFH4で組んだため、ガラスカットもシビアで、ケイムも柔らかくて扱い辛かったが、もっと太いケイムを使えば、難易度はかなり下がる。ただ、ガラスカットの際にルーターを多用する必要があるのは変わりないため、手間はそれなりに掛かる。
その点は、ケイムのライン通りにガラスをカットしなくとも、ケイムに隠れている範囲で型紙を工夫して、より無理のない、楽な形のガラスピースにすることで、手間をある程度省ける気がしている。次回もし制作することがあったら、一番改善したいところだ。
制作面では、クラッケルの縦横模様を一枚だけ間違えたこと、パテ入れの際、クラッケルの表側にマスキングをし忘れたため、パテが入ってしまったこと、意外は、全く問題なく進められた。
今回、副次的な成果として、ガラス同士の相性が良く分かった。10種類のガラスを使ったが、ケイムを介してのガラスの組み合わせの良し悪しや、彩度のバランスなどが良く分かり、次の制作に大いに活かせそうだ。
特に、ランバーツのライトブルーの鮮やかさが十二分に実感できたのが嬉しい。アンティークなので個体差が激しく、同じ色味のガラスを見つけられないかもしれないが、このガラスを主役にできれば、良いモノが作れそうな気がしている。