構想
ガラスピースとケイムを交互に組み合わせて図柄を創るのがステンドグラスの基本だが、今回はそれに反したことを試みる。
2液というのは、エポキシ樹脂を主成分とする2種類の液を混合して化学反応を起こし、それにより強固に接着させる特殊な接着剤の俗称である。
耐久性、耐水性、耐薬品性、耐熱性に優れるため、建築の分野では幅広く使われ、ステンドグラスの分野でも、しばしば使われる。
具体的には、主剤(A剤)であるエポキシ樹脂と硬化剤(B剤)であるポリアミド樹脂やポリチオール樹脂とを同じ量混合し、接着面に塗布して一定時間放置し、硬化・接着させる。
混合してから硬化が始まるまでの時間が製品によって決められているのが大きな特徴で、5分、30分、60分タイプなどがある。下の写真のものは、30分タイプ。
この2液を使ってケイムをガラスに張り付けることにより、通常の制作方法では行えなかったり、高難易度・手間のかかる表現を、比較的容易に行うことを目指す。
ステンドグラスの基本概念に反したテクニックであるため、使い過ぎると「偽ステンド」になってしまいかねないが、今回は習作と言うことで積極的に多用していく。
そうすることにより、
●このテクニックはどこまで使えるのか。
●使い勝手、メリット・デメリット。
●このテクニックにより表現の可能性はどの程度広がるか。
などを検証していきたい。
ちなみに、以前紹介した「現代ステンドグラス入門」では、このテクニックは「伸ばしのライン」という名称で紹介されている。
デザイン
今回のために描いたデザインがこれ。
通常では使わないような繋がりの少ないラインや、3mmのケイムを用いた細いラインを多く配してある。
外枠がFH12、中はFH6とFH3を使用。
ガラスのイメージをつけたバージョン。
サイズは、212mm×212mmで、ガラスは17ピースだけ。
製図
こちらが型紙。ここに表されていない線は、全て2液で張り付けることになる。
赤い線が張り付けるケイム。もちろん通常のケイムと同様、表裏に張り付ける。
全ての張り付けケイムは、固定された通常技法のケイムにどこかで接している。完全に宙に浮いた線は存在していない。そのため、必ずしも張り付けなくても良い箇所もあるが、固定が弱くケイムが歪みやすいため、全て張り付けにしてある。
敷き紙はこんな感じになった。張り付けるケイムのサイドに1mmずつ線が入っており、それを基準にして正確に張り付けられるようにしてある。これは、組みの際のケイムの線と同様だ。
補助線が多いためごちゃごちゃしているが、小さいパネルなのでこうなってしまう。実際に組む際には、補助線を基準にしていくので、とても大事な線たちだ。
ガラス選び
在庫にあるガラスから、クリア、白、赤・青のガラスをピックアップ。どれも過去に使ったことのあるものばかり。今回はこの4種類のガラスを使って実際に制作を行う。
今回はここまで。次回、実制作を行う。