【その3】に続いてケイム組みのランプシェードです。
前回で組みが終わり、今回はハンダ付けから完成までです。
全面ハンダ - The entire surface of the solder
組みと表の接点のみのハンダが終わった段階です。
カタチとしてはもう出来ているのですが、ここから歪みの修正や全面ハンダといった手間のかかる作業が待っています。
順番として、次に裏のハンダを行うと前回の最後で言った気がしますが、先に歪みを修正しつつ表面の全面ハンダを行おうと思います。
その前に、ケイムの縁を潰してケイムとガラスの隙間をなくしておきます。
このような隙間ですね。これを、ラスキンやケイムナイフなどでケイムの縁を潰すことによりなくしていきます。
表だけではなく裏側のケイムも潰すとより効果的です。
潰すと、フラットケイムがラウンドケイムのようになります。潰すことにより、隙間を埋めるだけではなくケイムの形を整えて見栄えを良くする効果もあります。
表のハンダをする前に、裏側もケイムの縁を潰しておきます。
ガラスがグラついていることもあるので、裏側からガラスを表側に押し出すようにケイムを潰しておけば、多少たりとも見栄えが良くなります。
潰しながら、縦横のケイムのラインの乱れも、ある程度整えます。
ほぼ、ケイムが潰せました。
このようにスタンドにハメてみて回転させることにより、歪みのチェックが的確に行えます。
膨らんでいる箇所はケイムを外側から叩き、逆に凹んでいる箇所は裏側からケイムを叩いてカタチの微調整を行います。
ここまできたら、表側の表面に全面ハンダを施します。
平面ではなく立体であるため、上から順にハンダ付けを行います。ハンダする箇所をその都度平らにして行っても良いのですが、今回は斜面に対してハンダを上から下へ流すように行いました。
このようなやり方だと、綺麗に薄く全面ハンダを施すことができます。
一番上のキャップの箇所は特に肉厚にハンダを盛ります。ここが弱いと、最悪の場合キャップの部分から下が外れてしまうことも考えられるので、十二分に強度を出します。
基本的には横の線を先にハンダ付けし、それをすべて終えてから縦のラインを仕上げます。
最後に縦のラインを行うのは、それにより余分なハンダを下に落としてしまうためです。
縦を先に行って横を後に行うと、余分なハンダを綺麗に下に落とすことができません。
表のハンダが終わったら次は裏です。
ハンダをする前に、縦横全てのケイムのラインを揃えます。特に全ての交点は、ヘラやケイムナイフを使って、縦横を完璧に揃えます。完璧にです。
全ての線が揃ったら、横の線(円形の線)からハンダを流します。おもて面と同じ要領です。
内側はハンダごてが曲面に干渉してやり辛いですが、角度等を工夫してすべてのケイムにハンダを流します。
一番下のUケイムにも全面ハンダを施します。
Uケイムは芯がない分非常に溶けやすいため、コテの温度を調整するなどして、溶かさないように気を付けます。
ただ、どうしてもHケイムと同じような要領でハンダを全面に盛ることは、今回は難しかったですね。。見ての通りデコボコになってしまいました。
ハンダは深追いしても綺麗に仕上がるとは限らないため、適当な所で妥協する必要があります。できるだけ一発で仕上げるのが一番のコツです。
まだまだハンダはデコボコですが、切りがないのでこの辺りで止めておきます。
裏面も全面にハンダを流し終えました。
これでハンダは終了です。文章にすると短いですが、実際はこの表裏の全面ハンダにかなりの時間が掛かってしまっています。。
時間短縮のためには、同じ作業をできるだけ繰り返さない様、計画的に行うことが大事ですね。綺麗に仕上げるためには、何と言っても数をこなして慣れることです。
なお、全面にハンダをしなくても接点だけでも良いのですが、今回は見栄えの綺麗さを優先したため、全面に行いました。接点のみのハンダだと、その部分だけハンダで脹らんでしまうのと、腐食させたときにケイムとハンダで色が変わってしまうのが気になります。
仕上げ - Finish
ここで表面の汚れ等を綺麗に落とします。
お湯と中性洗剤で入念に汚れを取り、表面のマジックも全て落としてしまいます。特にペーストの油が全体に付着しているため、念入りに除去します。ケイムとガラスの隙間に入り込んでいる油も、出来るだけ綺麗にします。
一旦、宙に吊るしてみます。
ハンダの凸凹も、そんなには目立たないですね(特に一番下の部分)。
腐食させれば凹凸のギラギラ感もなくなるので、全体のシルエットやケイムラインに問題がなければ、GO!です。
さて、最後にケイムを腐食させるのですが、その前に、もう少しケイムの状態を整えておきます。
余分な出っ張りをニッパーで切り落としたりヘラやナイフで整えたら、スチールのブラシで裏表全ての表面を磨き上げ、最後は真鍮のブラシで綺麗にならします。
表面の磨きは綺麗に腐食させるための重要な下準備です。
さて、今回はこの硫酸銅の溶液を更に水で薄めたものを使ってケイムを腐食させます。
製品名はブラッキーSNというものですが、小分けでは売られておらず、結構な値段がします。。
今回はこれを、水3:原液7、くらいの高濃度で使用します。
使用時には、ただ掛けたり塗ったりする訳ではなく、スポンジのツルツルの面(緑ではない側)を使って、刷り込むように浸透させていきます。
この液が手に掛かってもそんなに問題はありませんが、青くなるのでビニール手袋をして作業します。
常温黒染剤 錫金属用トビカブラッキーSN 5LBSN-5 [BSN5]スズ金属の... |
ケイムの縁の方まで綺麗に腐食させます。
見ての通り、腐食させるかさせないかで見た目の印象が大きく変わります。好みですので、腐食させないのも、勿論ありです。
表裏、全ての腐食が終わりました。
この状態で5分程度放置したら、水で綺麗に洗い流します。その際、表面を強く擦ると腐食が取れてしまうので、あくまでシャワーを掛ける程度で止めておきます。
乾燥中です。
腐食させてケイムのギラつきがなくなると、自然とガラスが際立ちます。
それにしてもかなり黒くなりました。
もう少し原液を水で薄めても良かったですね。次回は事前にテストしてから本番を行うようにします。。
表面はこのような状態です。何とも言えない古びた感じが良いです。
隅々まで綺麗に黒く染まっています。
完成 - Completion
あとは、諸々の部品を取り付けて、鎖で吊るすだけです。
今回はマットな仕上がりにしたかったため、腐食させた後に何も塗らなかったですが、ワックスなどを塗ってもokです。
配線や鎖などは前回使ったものをそのまま流用しています。クリーニングは敢えてせず、パテ入れも行いません。これで完成です。
光を灯した状態。悪くないですね。光を入れないと青系の色味強く出ますが、光を入れると暖色系の暖かい感じになるのが面白いところです。
ケイムの歪みやハンダのゴツゴツもそんなに気にならないレベルです。
ここまで長い道のりでした。。
ギャラリー - Gallery
光の状態によっていろいろな表情を見せてくれるのが、ガラスの大きな魅力です。
振り返り・反省点 - Reflection
光を入れないと少し重い感じですが、光を入れると温かみのある落ち着いた感じが出て、なかなかどうして悪くないです。制作中は一番下のUケイムのところがちょっと単純すぎるかなと思いましたが、出来れしまえばこれはこれでシンプルで良い感じです。
あとは、ハンダの稚拙さは、全く気にならない(見えない)ですね。そんなことよりも何よりも、形の歪みをなくしてケイムのラインを揃えることが大事だと実感しました。
ちなみに、今気付いたのですが、今回のランプは真横から見た状態で上から2段目~9段目が横から見ると正円、1段目は逆に反っているように設計していました。しかし、1段目も正円の一部だと思い込んで作っていて、本当は逆に反らせなければいけないのに、強引にそのまま組んでしまっていました!!
どうりで正円にならない訳ですよね・・。1段目と2段目の間をきちんと逆に反らせていれば、当初の設計通りに組めていたかもしれません。まあ、基本的にはガラスの形に合わせてそのまま素直に組んでいるので、反らなかったかもしれませんが、勘違いは猛省すべき点です。
あと、ガラスが密な状態の箇所は誤差が出やすいのは確かなので、今度やるときはその辺りも踏まえて設計したいと思います。
他の反省点としては、
・ケイムの継ぎ目が、数か所ズレていた(ほぼ気にならないレベルだが)。ハンダ付けの際に縦横からしっかりとチェックして修正すれば済むことなので、要注意。
・思ったよりクラスター感が出なかった。今回は周囲が24面だが、次に作ることがあれば32か36面にしようと思う。
・時間が掛かり過ぎた。
などです。
今回のを制作しながら次回作の構想はほぼ出来上がったので、また同じようなのの制作に近々取り掛かろうと思います。
楽しみです♪